パーキンソン病やレビー小体型認知症などの神経変性疾患シヌクレイノパチーにおいて、酸化ストレスやα-シヌクレインの変性タンパク質の蓄積等、様々な要因が絡み合うことで病態が進行する。これまでに家族性パーキンソン病の原因遺伝子として同定されているPARK7/DJ-1に焦点を当てた研究を行ってきた。しかし、その詳細なメカニズムは明らかとなっていないことから、細胞内メカニズムを明確にする目的で研究をおこなった。 最終年度において、Dulbecco's PBS(D-PBS)およびNa+濃度が異なる溶液に7日間振とう凝集したPFFsをチオフラビンTにより βシート構造を定量した。それらのα-シヌクレイン既形成原線維(pre-formed fibrils: PFFs)をマウスの線条体に微量注入した。12 週間後、脳内のα-synの凝集体形成を組織免疫染色により解析した。In vivo動物モデルの作製検討において、脳内にα-シヌクレイン凝集体が形成した匹数が最も多かった作製条件は、K+フリーでNa+濃度が157 mM のリン酸緩衝液で作製したPFFsであった。マウス線条体の微量注入した部位の周辺ばかりでなく、黒質・大脳皮質などにも凝集体様の形成物を確認することができた。このin vivo実験系において、私たちが見出したDJ-1結合化合物 compound-23を12週間に腹腔内投与した後、注射側および反側に凝集体の形成が確認された。しかし、凝集体の形成具合は劇的な個体差が示した。このため、compound-23の投与により有意な変化が認められなかった。今後、より安定的な動物疾患モデルが確立されれば、DJ-1の役割およびcompound-23など薬物作用の評価ができると期待される。
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