研究課題
アストロサイトの空間的カリウム緩衝機能はシナプス間隙での細胞外カリウムを除去するクリアランス機構の一つであり、アストロサイトに局在する内向き整流性Kir4.1チャネルにより仲介されている。本研究では、Kir4.1チャネルの機能に着目し、精神神経疾患の発症および治療におけるアストロサイトの役割を明らかにする。本研究において、①Kir4.1チャネル阻害薬が培養アストロサイトにおける神経栄養因子(BDNFなど)の発現を上昇し、corticosteroneによるBDNF、GDNFおよびNGFの発現低下を改善することが示された。また、②マウスを用いた行動薬理試験において、Kir4.1チャネル阻害薬がlipopolysaccharide(LPS)投与によるうつ病様症状、不安障害、認知機能障害を改善することが明らかとなった。さらに、③動作時振戦およびてんかん様発作を惹起するニコチンがα7ニコチン受容体を介してアストロサイトを活性化することや、アストロサイトの不活性化がニコチンけいれんを抑制することから、ニコチンによるアストロサイトの活性化がてんかん様発作の発現促進に関与することが明らかとなった。以上、一連の研究結果から、アストロサイトのKir4.1チャネルが精神神経疾患(うつ病、不安障害、認知障害、てんかん)の発症および治療に関与し、新たな治療ターゲット分子として期待されることが明らかとなった。
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