研究課題/領域番号 |
21K06589
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
米山 雅紀 摂南大学, 薬学部, 教授 (00411710)
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研究分担者 |
山口 太郎 摂南大学, 薬学部, 講師 (30710701)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 難聴 / オートファジー / 外らせん溝細胞 |
研究実績の概要 |
【目的】本研究では、音刺激に対する蝸牛内でのオートファジーによる細胞保護機構を明らかにするために音響性難聴誘発モデルマウスを用いて、音響曝露したマウスの聴力に対するオートファジー阻害薬であるクロロキン(CQ)あるいはオートファジー活性化薬であるラパマイシンの影響について解析した。 【方法】5週齢Std-ddY 系雄性マウスに8 kHz、90 dBあるいは110 dBの音刺激を1時間曝露した後、各周波数(4、12および20 kHz)について聴性脳幹反応(ABR)を指標に聴力を測定した。CQ(40 mM)は90 dBの音刺激1時間前にマウス蝸牛内正円窓に1時間留置し、蝸牛内に浸透させた。一方、ラパマイシン(0.5 mM)は110 dBの音刺激24時間前にマウス左耳後部を切開し、骨胞を開放して露出させた蝸牛正円窓上部にラパマイシンを浸透させた止血用ゼラチンスポンジを留置し蝸牛内に浸透させた。 また、110 dBの音響縛したマウスから蝸牛切片を作成してLC3(オートファジーマーカー)およびSLC26A4(外らせん溝細胞マーカー)に対する抗体を用いて免疫組織化学法により解析した。 【結果】マウスの聴力に対する薬物処置の影響をABRにより解析したところ、90 dB音響曝露を行ったものでは、対照群で聴力に変化はみられなかったが、CQ処置は90 dB音響曝露後の聴力を有意に悪化させた。一方、110 dBの音響曝露はマウスの聴力を著明に悪化させるが、ラパマイシン処置は、この聴力悪化を有意に抑制した。免疫組織化学法の結果、110 dB音響曝露後の蝸牛では、LC3とSLC26A4両抗体陽性細胞が認められ、その発現は完全に一致した。 【考察】以上の結果から、蝸牛外らせん溝細胞にはオートファジーによる細胞保護機構が存在し、外部からの音刺激に対して聴覚機能を維持する重要な役割をもつ可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス蝸牛内へのクロロキン処置は、90 dB音響曝露後の聴力を有意に悪化させた。一方、110 dBの音響曝露はマウスの聴力を著明に悪化させるが、蝸牛内へのラパマイシン処置は、この聴力悪化を有意に抑制した。免疫組織化学法の結果、110 dB音響曝露後の蝸牛では、LC3とSLC26A4両抗体陽性細胞が認められ、その発現は完全に一致した。 免疫組織化学法において、110 dB音響曝露後の蝸牛では、LC3(オートファジーマーカー)とSLC26A4(外らせん溝細胞マーカー)両抗体陽性細胞が認められ、その発現は完全に一致した。 これらのことから、音刺激に対して蝸牛外らせん溝細胞にはオートファジーによる細胞保護機構が存在し、外部からの音刺激に対して聴覚機能を維持する重要な役割をもつ可能性が示唆される。 以上の結果は、予定していた実験計画のものであり、本研究が順調に進展したことを示すものである。
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今後の研究の推進方策 |
音響曝露に対するオートファジー活性化薬のラパマイシンの影響について解析する。具体的には、110 dB音響曝露に対するラパマイシンの影響について、蝸牛らせん靱帯におけるオートファジー関連因子(LC3、p62、Beclin1等)およびリソソーム関連因子(TFEB等)の発現変化を解析する。また、酸化ストレスのような音響曝露に伴うらせん靱帯に特異的な変化とオートファジーとの関連性について解析する。以上により、音刺激に対する蝸牛内でのオートファジーによる細胞保護機構と聴覚機能の維持との関わり合いについて明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
順調に研究が遂行でき、購入を予定していた試薬がキャンペーン価格となったため、若干の差額が生じることとなった。
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