研究課題
研究代表者らは,妊娠中の抗てんかん薬服用により出生児の自閉スペクトラム症 (ASD) リスクが増大するという臨床知見に着目し,代表的な抗てんかん薬であるバルプロ酸 (VPA) を胎生12.5日目に曝露したマウスにおいて,出生後に雄性のみが社会性行動の低下といったASD様症状を示すこと,ならびに大脳皮質の器質的および機能的変化が生じていることを見いだした.本研究は,ASD様症状を示した“雄性”の胎仔期VPA曝露マウスと,ASD様行動が誘導されなかった“雌性”の胎仔期VPA曝露マウスにおいて,VPA曝露後の胎仔~出生仔の脳内における神経生化学的および神経解剖学的変化を比較解析し,“性差”を指標として,ASDの中核症状様行動の発現に関わる誘導分子あるいは抑制分子を解明することを目的として立案した.令和4年度は,(1) 胎仔期VPA曝露によるASD症状において性差をもたらせる候補分子の探索と同定,および (2) 脳の性分化に関わる分子の胎生期VPA曝露による産生および発現変化の解明に関わる実験を計画し,研究代表者である田熊と研究分担者である松崎に加えて,研究協力者として研究代表者の教室で新規採用した准教授1名,院生 (2名) と学生 (2名) に参画いただき実験を進めた.令和4年度は,新設した行動解析室において成育後のASD様行動発現の再現性を確認するとともに,生後1日齢の雌雄マウスの大脳皮質より抽出したRNAよりcDNA標品を調製し リアルタイムPCR法にてエストロゲン受容体,エストロゲン合成酵素甲状腺ホルモン変換酵素の発現変化を解析した.解析した分子において現時点において性差は検出できていないが,いずれの分子もVPA曝露群で減少傾向が認められたため,現在追加実験を実施中である.
3: やや遅れている
計画立案時に想定した以上に,コロナウイルス感染拡大および研究代表者が利用する研究棟の改修工事の影響 (騒音と粉塵,機器移設時のフリーザーおよび超低温フリーザーの故障) の影響が非常に大きく,令和3年度の研究計画がかなり遅れることとなった.令和4年度の前半は実験環境の再整備に少し時間を要したが,後半からはやや遅れながらも研究計画に沿って実験を進めている.
コロナウイルス感染拡大と研究代表者が利用する研究棟の改修工事の影響により研究計画が遅延したため,研究計画の進捗状況は良いものとは言えないが,令和4年度に実験環境の再整備と研究協力者の体制構築ができたことより,令和5年度は,これまでの遅れを挽回できるように,今まで以上に途中過程での討論を増やし,より効率よく,そしてより確実に実験を進めていくことができるように尽力する.
コロナウイルス感染拡大と研究代表者が利用する研究棟の改修工事の影響により,採択初年度の研究計画を大幅に変更せざるを得なかったため.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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