研究課題
研究代表者らは,妊娠中の抗てんかん薬服用により出生児の自閉スペクトラム症 (ASD) リスクが増大するという臨床知見に着目し,代表的な抗てんかん薬であるバルプロ酸 (VPA) を胎生12.5日目に曝露したマウスにおいて,出生後に雄性のみが社会性行動の低下といったASD様症状を示すこと,ならびに大脳皮質の器質的および機能的変化が生じていることを見いだした.本研究は,ASD様症状を示した”雄性”の胎仔期VPA曝露マウスと,ASD様行動が誘導されなかった“雌性”の胎仔期VPA曝露マウスにおいて,VPA曝露後の胎仔~出生仔の脳内における神経生化学的および神経解剖学的変化を比較解析し,“性差”を指標として,ASDの中核症状様行動の発現に関わる誘導分子あるいは抑制分子を解明することを目的として立案した.令和5年度も前年度に引き続き,胎仔期VPA曝露によるASD症状において性差をもたらせる候補分子の探索と同定について,研究代表者である田熊と研究分担者である松崎に加えて,研究協力者として研究代表者の講座の准教授1名,助教1名,院生 (1名) と学生 (3名) に参画いただき実験を進めた.令和5年度は,妊娠12.5日目にVPAを投与した雌性マウス由来胎仔の性別をPCR法にて確定するとともに,各胎仔の大脳皮質より抽出したRNAよりcDNA標品を調製し,RNA-Seq法 (委託) により網羅的遺伝子発現比較を行った (胎仔の摘出はVPA投与の6時間後).VPA曝露により有意な発現変動が認められる分子,ならびに発現変動に有意な性差が認められる分子を数10個抽出しており,引き続き,各分子の病態生理学的役割を追究していく.またこれまでに,ASDモデルの雄性仔マウスで観察したオキシトシンの異常行動改善効果について,性差を視野に解析を行った.
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Journal of Pharmacological Sciences
巻: 153 ページ: 175-182
10.1016/j.jphs.2023.08.006
https://web.dent.osaka-u.ac.jp/pharm/index.html