研究課題/領域番号 |
21K06604
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
中原 努 北里大学, 薬学部, 教授 (10296519)
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研究分担者 |
森田 茜 北里大学, 薬学部, 助教 (00828072)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 網膜血管 / 血管異常 / ペリサイト |
研究実績の概要 |
糖尿病網膜症は、糖尿病三大合併症の一つであり、日本の後天性失明原因第三位の疾患である。本疾患は、糖尿病の発症から5~10 年の期間を経て形成される網膜血管病変に起因して発症する。我々は、これまでに慢性骨髄性白血病の治療薬である imatinib が新生仔ラットの網膜血管において周皮細胞 (ペリサイト) を速やかに脱落させ、その部位から 1 週間以内にヒトの糖尿病網膜症と類似した病的な血管を新生させることを見出している。本研究では、imatinib によって網膜血管ペリサイトを脱落させるモデルを新規糖尿病網膜症の実験モデルとして確立することを目的としている。本年度は、まず imatinib の標的分子である PDGFRα 及び β の網膜内発現分布と発達に伴う変化について検討を行った。PDGFRα はアストロサイト、PDGFRβ はペリサイトにそれぞれ発現していた。アストロサイトにおける PDGFRα の発現は 4 日齢から 13 日齢にかけて低下し、21 日齢以降、ほとんど認められなくなった。一方、ペリサイトにおける PDGFRβ の発現は 56 日齢まで大きく変化しなかった。次に 4、7、10、13 及び 21 日齢のラットに imatinib (100 及び 300 mg/kg) を投与し翌日に観察されるペリサイトの脱落の程度について比較した。4 日齢から 13 日齢までのラットに imatinib (100 及び 300 mg/kg) を投与するとその翌日には imatinib の用量に依存したペリサイトの脱落が認められたが、その程度は日齢に依存して減少し、21 日齢のラットでは、imatinib の網膜血管ペリサイト脱落効果はほとんど観察されなくなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Imatinib の標的分子である PDGFRα 及び β の網膜内発現分布と発達に伴う変化について明らかにできたこと、imatinib を用いてラットの網膜血管ペリサイトを脱落させることができる条件を絞りこむことができたことから、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度明らかになったラットの網膜血管ペリサイトを脱落させることができる imatinib の処置条件を用いて、網膜血管ペリサイトを脱落させて、その後に生じる網膜血管の構造及び機能異常について検討を行う。網膜血管周囲に存在する神経細胞やグリア細胞の変化についても検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響を受け研究活動に制限が生じたため、次年度使用額が発生したが、imatinib の処置条件をかなり絞りこむことができたので、その結果を踏まえて、網膜血管ペリサイトの脱落後に生じる、網膜血管の構造及び機能異常と網膜血管周囲に存在する神経細胞やグリア細胞の変化について検討を行う。
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