昨年度までの検討により、慢性骨髄性白血病の治療薬である imatinib (100 mg/kg) を 4 日齢のラットに単回投与すると、その翌日には毛細血管ペリサイトが 80% 以上脱落し、伸長しつつある血管の盲端部が膨大し血管瘤が形成され始めること、血管瘤の数は投与 7 日後まで時間依存的に増加することが明らかになった。 本年度の検討により imatinib (100 mg/kg) の 4 日齢時の単回投与よりも 4 日齢時と 5 日齢時の 2 日間投与した場合のほうで血管瘤形成が顕著であることが明らかになったため、本処置条件において形成される血管瘤について検討を進めた。その結果、血管瘤には血管内皮細胞が密に存在しており、それらの多くは Ki67 陽性であることが示された。従って、血管瘤は血管内皮細胞の肥大ではなく数の増加により形成されるものと考えられた。そこで血管内皮細胞の生存と増殖に重要な役割を演じている VEGF の血管瘤形成における役割について検討を行なった。その結果、投与 4 日後の時点で、VEGF 受容体 2 は血管瘤とその周囲の新生血管血管ならびに神経細胞に発現していること、VEGF は神経節細胞に発現していることが示された。その時点から VEGF 受容体阻害薬を処置すると血管瘤における Ki67 陽性細胞数の減少と血管瘤の縮小が生じた。Imatinib によって網膜血管ペリサイトを脱落させた後に生じる血管新生および血管瘤形成には VEGF-VEGF 受容体経路が重要な役割を担っていることが明らかになり、ヒトの糖尿病網膜症で生じる血管異常との類似性が示された。
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