研究課題/領域番号 |
21K06607
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
朝日 通雄 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (10397614)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 心不全 / cGAS-STING経路 / TLR9―MyD88経路 / STING / TLR9 |
研究実績の概要 |
野生型、STINGあるいはTLR9ノックアウトマウスに対して種々の方法で心不全を作製し、心不全の様々な発症原因、病期進行におけるcGAS-STING経路、TLR9―MyD88経路の関与を明らかにし、さらにそれぞれの役割分担や活性化の時間的差異について検討する。 本年度は、cGAS-STING経路について先行して研究を遂行した。まず、イソプロテレノールを持続注入して心不全を誘発するカテコラミン誘発性心不全マウスモデルを用いて、cGAS-STING経路の関与について、STING阻害薬投与による影響を検討した。STING阻害薬の投与によって、cGAS-STING経路が抑制されることをまず確認した。イソプロテレノール投与後1,2,4週での心筋組織のデータを解析すると、2週後からANP,BNPが上昇し、心・体重量比が上昇するが、STING阻害薬で抑制された。また、イソプロテレノール投与2週後から心筋組織の線維化が進行するが、STING阻害薬で抑制された。1週後ではANP,BNPはまだ上昇していないが、cGAS-STING経路は活性化していたことから、cGAS-STING経路が心機能が低下する前に先行して活性化する可能性が考えられた。 圧負荷による心不全についてもcGAS-STING経路の関与について検討した。胸部大動脈弓を結紮する(TAC)ことにより圧負荷をかけて心不全を誘発するマウスモデルを用いて、STING阻害薬投与の影響を検討すると、cGAS-STING経路を抑制することにより、4週後に生じる心不全を抑制することが分かった。以上より、様々な原因によって生じる心不全の発症、悪化にcGAS-STING経路が関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
cGAS-STING経路の解析は順調であるが、TLR9をノックアウトするAAV作製に時間がかかっており、TLR9―MyD88経路の解析が進んでいない。次年度はその遅れを取り戻す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
STING とTLR9のノックアウトAAVを作製し、それらの投与が各種心不全に与える影響を検討する。各病期におけるcGAS-STING経路、TLR9―MyD88経路の活性化状態を比較することにより、各病期における両経路の役割を明らかにするとともに、各経路をどの病期で抑制すれば心不全の進行を抑制できるのかを検討する。両経路を同時に抑制すれば心不全抑制に対する相乗効果があるかどうかについても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスでTLR9ノックアウトAAVの効果が確認できず(うまく働かず)、心不全におけるTLR9―MyD88経路の役割についての研究が進まなかったのが原因と考えられる。 次年度はまだ作製できていないTLR9ノックアウトAAVを作製するためのsiRNAや試薬類の購入や心不全の各病期における両経路の役割を明らかにするためのマウス購入等に研究費を使用する予定である。
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