研究課題/領域番号 |
21K06613
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
谷口 俊一郎 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任教授 (60117166)
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研究分担者 |
肥田 重明 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (10345762)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ビフィズス菌 / 固形腫瘍 / DDS / 免疫学的安全性 / サイトカイン / 菌株依存性 / がん治療 |
研究実績の概要 |
偏性嫌気性常在性の腸内細菌であるビフィズス菌を腫瘍特異的DDSとして臨床利用するための安全性の分子基盤を明らかにすることを目的として研究している。ビフィズス菌を、大腸ではなく静脈内や腫瘍内に異所性に投与し、腫瘍組織の微小環境特異的な固形がんのドラッグデリバリーシステム(DDS)への応用を検討している。本来、菌体成分を血中に投与すると敗血症や繰り返し投与によるアレルギー性炎症が危惧される。これまでの本研究でTLR2遺伝子欠損マウス由来培養マクロファージや樹状細胞を用いてビフィズス菌で刺激した場合、IL-6, TNF-αなどの炎症性サイトカインの産生量が顕著に低下したことから、ビフィズス菌に含まれる菌体成分には、TLR2 リガンドが含まれており、主にTLR2 を介して、宿主自然免系細胞が応答することを明らかにした。 興味深いことに、in vivoのビフィズス菌の静注ではサイトカインストームは観察されなかったことから、マウスの末梢血由来の血清にはビフィズス菌由来のTLRリガンドの作用を抑制する物質が含まれていることが示唆された。また、同じグラム陽性菌細菌である表皮ブドウ球菌を静注した場合は、末梢血中にIL-12などの炎症性サイトカインがビフィズス菌投与時の10~50倍量増加した。さらに複数のビフィズス菌株で、in vivoのサイトカイン産生量を調べたところ、菌株の種類によっても宿主免疫応答が異なることが観察できている。宿主免疫応答を最小限になる安全な菌株をもちいたDDSを作ることが重要であることが示唆された。今後、ビフィズス菌と宿主免疫細胞の相互作用の分子機構を解析することで、腫瘍特異的DDSに用いた場合の免疫学的安全性の解明につながる可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同じグラム陽性菌細菌である表皮ブドウ球菌を静注した結果が新たに得られた。末梢血中にIL-12などの炎症性サイトカインがビフィズス菌投与時の10~50倍量増加する事実が認められ、さらに複数のビフィズス菌株で、in vivoのサイトカイン産生量を調べ、菌株の種類によっても宿主免疫応答が異なることが観察できた。このことは宿主免疫応答が最小限となる安全な菌株を用いたビフィズス菌株によるDDS構築が重要であるという意義ある新知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
近年、免疫チェックポイント阻害によるがん治療においてビフィズス菌による促進効果が報告されている。しかし、同じビフィズス菌でもその効果が異なるということが注目されるようになり、本研究でも宿主の自然免疫的反応が同じビフィズス菌でも異なることが認められた。今後はこの点に着目した宿主の自然免疫及び獲得免疫反応について解析を進展させる。そのためにゲノム編集の手法を用いるやり方、菌表面をPEGなどの高分子で一過性に修飾する手法を試みる。それによって宿主の反応を一過性に回避し、腫瘍への着床効率が亢進するか否かを調べ、ビフィズス菌を用いるDDSを安全に亢進する工夫を試みる。
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