研究課題/領域番号 |
21K06615
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
大橋 一晶 岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (70344679)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 薬用植物 / セリ科 / センキュウ / 学名 |
研究実績の概要 |
学名の確定作業ための分子系統解析の一環として、センキュウの両親種の推定を試みた。センキュウ両親種の手がかりを得るためには、葉緑体DNAではなく、両親種の情報を持つ核DNAの配列を解析する必要がある。まずはマルチコピーで解析の容易なリボソームRNAの遺伝子間領域(ITS)を解析した。ITS配列は種間での変異が大きく、種同定に有用な領域である。センキュウのITSをPCRにより増幅後、両親種の情報が混ざっていると考えられるためクローニングを行い、約30クローンほど配列を解析した。大まかに両親種に由来する2系統の塩基配列が得られることを期待したが、得られた配列はクローン間で変異に乏しく、ほぼ同一の配列であった。ITS領域は、交配後に変異が入って両親種の差異が失われ均一化する例が知られており、センキュウでも同様の状態が生じている可能性が考えられる。したがって、ITSの解析からはセンキュウの両親種の推定は困難であることが予想される。 また、センキュウ結実個体の作成については、倍数体作成のためのコルヒチン処理を茎頂に行う必要がある。最も容易なのは、花芽に薬剤処理を行う方法であるが、今年度は開花個体が極端に少なく、花芽に薬剤処理を行うことができなかった。そこで、茎頂の細胞分裂が活発化すると予想される早春に根茎全体を薬剤処理し、植え付けを行った。 一方、ゲノム解析や交配実験には、標本ではなく生きた個体があることが望ましい。ITS領域の解析の結果、センキュウに最も近縁であることが分かったLigusticum sinenseについて生育個体を得たが、誤同定であり別種であることが分かった。中国の薬用植物園からの種子交換による植物とのことなので、植物学的に興味が持たれるため、この植物について同定作業を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の実験計画であったリボソームRNAの遺伝子間領域(ITS)の解析結果からのみでは、センキュウの両親種の推定は困難であることがわかった。また、センキュウ結実個体の作成についても、今年度は開花個体が少なく花芽に薬剤処理を行うことができなかった。以上の結果は予想外ではあったが、成果が十分に得られているとは言えず、計画にやや遅れが生じていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、センキュウおよび近縁種の系統関係を解明することを試みる。とくに、センキュウ両親種の推定のために核ゲノムの解析を行う。 センキュウ結実個体の作成に関しては、今年度も花芽形成の行われた株について薬剤処理を試みる。また、すでに根茎全体を薬剤処理した株については、開花時の花粉形成を指標に倍数体のスクリーニングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
植物組織を培養するインキュベーターを購入予定であったが、実験の目的に合わせて性能や容量を考慮すると、上位機種のほうが適していることがわかり、その購入の経費に用いるために次年度に繰り越しを行った。
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