研究課題/領域番号 |
21K06616
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
浅見 行弘 北里大学, 感染制御科学府, 教授 (70391844)
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研究分担者 |
君嶋 葵 北里大学, 感染制御科学府, 助教 (10832404)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 薬剤耐性因子 / 生物活性物質 |
研究実績の概要 |
β-ラクタム系抗生物質に耐性を獲得した細菌が問題になっている。β-ラクタム系抗生物質に耐性を示すグラム陽性細菌は、主要な耐性機構としてβ-ラクタム系抗生物質が結合できないPBP2'を発現させることで、β-ラクタム系抗生物質の抗菌活性を回避する。そこで、PBP2'阻害剤を使用すれば、β-ラクタム系抗生物質の有効性を復活させることができると考えられる。 上記のような背景から、これまでに特異的なPBP2'阻害剤の開発研究が試みられてきたが、いまだ上市には至っていない。 本研究では、微生物培養液をスクリーニングすることにより、MRSAのβ-ラクタム系抗生物質の耐性因子の一つであるPBP2'を阻害する生物活性物質を探索し、PBP2'産生菌感染動物モデルを用いて、β-ラクタム系抗生物質との併用効果を検討することで、PBP2'産生菌(MRSA)感染症に治療効果を示す新規物質を創製することを目的とした。 糸状菌培養液累計1080サンプル、放線菌培養液サンプル累計380サンプルについて、スクリーニングを実施した。これまでに、MRSAを用いた阻害剤探索スクリーニング系では、耐性克服活性を示した20サンプル、抗MRSA活性を示した58サンプルに対して、高度耐性株を用いたスクリーニングを実施した。 結果として、活性物質を精製する対象になるサンプル数は78サンプルとなった。これらから得られた幾つかの化合物に対して種々の病原性細菌株を用いた抗菌活性評価を実施した。MRSAに対してカルバペネム系抗菌薬のMEPMと相乗効果を示す有望な化合物が単離を単離・構造解析してチェッカーボード法による評価を実施した。加えて、メロペネムの最小発育濃度(MIC)についても、メロペネム単独時と比較して、単離化合物と併用することにより、MICが1/64に低下することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連携研究者から供給される生物活性物質の探索源は、令和3年度に続き本年度も供給可能である。 スクリーニング、生物活性物質の単離・精製および構造解析においても連携研究者と打ち合わせを終え、令和3年度に続き本年度も連携研究を開始している。 特に、令和3年度では、高度耐性MRSA株に対しても、併用効果の程度を示すFIC indexが0.19以下となり高い相乗効果を示す化合物を取得できたことから、本年度も生物活性物質を見出すことが出来ると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
連携研究者から供給される生物活性物質の探索源として、糸状菌培養液および放線菌培養液から、生物活性物質取得のためにスクリーニングを引き続き実施し、薬剤耐性因子に作用する生物活性物質の取得を実施していく。 すでに、いくつかの生物活性物質を取得したことから、それら化合物とカルバペネム薬のメロペンを併用した試験、チェッカーボード法による化合物の効果を検証していく。 高度耐性MRSA株に対しても、併用効果の程度を示すFIC indexが0.19以下となり高い相乗効果を示す化合物を取得できたことから、今後の誘導体創製につながる化合物であるかを評価するために、マウスを用いた安全性評価試験体制の構築と、全身感染モデルの構築を本年度、来年度で立ち上げられるように連携研究者らと準備を始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
独立基盤助成金を利用して、本研究課題に使用するインキュベータを購入したため。令和3年度に購入することで、研究進捗が早まると判断した。
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