研究課題
β-ラクタム系抗生物質に耐性を獲得した細菌が問題になっている。β-ラクタム系抗生物質に耐性を示すグラム陽性細菌は、主要な耐性機構としてβ-ラクタム系抗生物質が結合できないPBP2'を発現させることで、β-ラクタム系抗生物質の抗菌活性を回避する。そこで、PBP2'阻害剤を使用すれば、β-ラクタム系抗生物質の有効性を復活させることができると考えられる。上記のような背景から、これまでに特異的なPBP2'阻害剤の開発研究が試みられてきたが、いまだ上市には至っていない。本研究では、微生物培養液をスクリーニングすることにより、MRSAのβ-ラクタム系抗生物質の耐性因子の一つであるPBP2'を阻害する生物活性物質を探索し、PBP2'産生菌感染動物モデルを用いて、β-ラクタム系抗生物質との併用効果を検討することで、PBP2'産生菌(MRSA)感染症に治療効果を示す新規物質を創製することを目的とした。これまでにスクリーニングして来た糸状菌培養液累計1080サンプル、放線菌培養液サンプル、および海洋天然物サンプルについて、活性物質の単離・精製および構造解析を実施した。海洋天然物から顕著な活性は検出できなったが、新規化合物1化合物、と既知化合物3化合物を取得し、その結果を論文掲載した(Ishii T, et al., Journal of Asian Natural Products Research 2022 Oct 6;1-7. )。放線菌培養液サンプルからは、薬剤耐性菌に対して強力な抗菌活性を示す化合物を取得し、論文報告した(Kimishima A, et al., ACS Omega)。加えて、マウスを用いた安全性評価試験体制の構築と全身感染モデルを構築し、予備実験は終了した。
2: おおむね順調に進展している
連携研究者から供給される生物活性物質の探索源は、本年度も供給可能である。スクリーニング、生物活性物質の単離・精製および構造解析においても連携研究者と打ち合わせを終え、本年度も連携研究を開始している。特に、MRSA株に対しても、併用効果の程度を示す相乗効果を示す化合物精製中であることから、本年度も生物活性物質を見出すことが出来ると期待している。
連携研究者から供給される生物活性物質の探索源として、糸状菌培養液および放線菌培養液から、生物活性物質取得のためにスクリーニングを引き続き実施し、薬剤耐性因子に作用する生物活性物質の取得を実施していく。すでに、いくつかの生物活性物質を取得したことから、それら化合物とカルバペネム薬のメロペンを併用した試験、チェッカーボード法による化合物の効果を検証していく。高度耐性MRSA株に対しても、併用効果の程度を示すFICを検証する。今後の誘導体創製につながる化合物であるかを評価するために、本年度までに構築されたマウスを用いた初期安全性評価試験と全身感染モデル評価系を実施する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
ACS Omega
巻: 8 ページ: 11556-11563
10.1021/acsomega.3c00651
Journal of Asian Natural Products Research
巻: - ページ: 1-7
10.1080/10286020.2022.2130266