研究実績の概要 |
ジンチョウゲ科植物より単離されるダフナン型ジテルペノイドは、優れた潜伏期HIV再活性化作用を示し、「Shock & Kill」戦略に基づいた新規抗HIV薬創製の有力な候補化合物である。本年度は前年度に引き続きDaphne pedunculataおよびEdgeworthia chrysantha、新たにWikstroemia indicaの3種のジンチョウゲ科植物について新規抗HIV活性ジテルペノイドの探索を行った。 D. pedunculataからは2種の新規化合物を含む計4種のダフナン型ジテルペノイドを単離、構造決定した。単離した化合物について抗HIV活性を評価した結果、IC50 = 0.82-7.13 nMの範囲で強力な活性を示した。E. chrysantha(ミツマタ)はLC-MS/MS分析を用いた成分探索により、2種の新規大環状ダフナンを単離、構造決定した。新規化合物はedgeworthianin類大環状ダフナンと同様に炭素数14の不飽和脂肪族鎖由来の大環状環を有しており、抗HIV活性はIC50=1.61, 7.03 μMであった。W. indicaはLC-MS/MSを用いた成分解析により、21種のオルトエステル型、ポリヒドロキシ型および大環状型ダフナンが含まれることを明らかにし、MS/MSフラグメンテーションの解析がこれらジテルペノイドの構造推定に有用であることを示した。 本研究では、ジンチョウゲ科植物由来の抗HIV活性ジテルペノイドの探索研究により、多様な化学構造を有する新規大環状ダフナンを単離・構造決定し、抗HIV活性を評価することで、大環状ダフナンの化学構造多様性および構造活性相関に関する知見を拡大した。今後は得られた知見をより優れた抗HIV活性を示す化合物の探索に活用することで、革新的なHIV感染症根治薬創製に貢献することが期待される。
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