研究課題/領域番号 |
21K06627
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田浦 太志 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (00301341)
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研究分担者 |
森田 洋行 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (20416663)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プレニル基転移酵素 / 生合成 / 二次代謝 / 薬用植物 |
研究実績の概要 |
本年度は大麻(Cannabis sativa)由来プレニル基転移酵素CsPT4について酵母で組換え酵素を発現して基質特異性を詳細に検討した。本酵素はolivetolic acidにGPP由来のゲラニル基を転移することでカンナビノイド骨格を形成する生理機能を有する酵素であるが、実際には非常に広範な基質と反応可能であることを明らかとした。第一にCsPT4はGPPのみでなくDMAPP(C5)からGGPP(C20)に至る各種鎖長のプレニル基質を転移可能であることを明らかとした。また、芳香族基質に関しても側鎖長の異なるolivetolic acid類縁体に加えて、ビベンジルやカルコンといった骨格の異なる基質も受容してプレニル化する活性を有していた。このように多様な生成物を合成できるプレニル基転移酵素はCsPT4が初めてである。現在、本酵素が合成した多様なプレニル化ポリフェノールの抗がん作用について検討を行なっている。 また、本年度はアギ(Ferula assa-foetida)の抗がん成分であるumbellipreninの生合成に関わるO-ファルネシル基転移酵素(FaPT1)についてトランスクリプトーム解析に基づく遺伝子同定に成功した。得られたcDNAについて、酵母での組換え酵素の発現を行い活性測定を検討した。この結果、FPPおよびumbelliferoneを基質とする酵素反応によりumbelliprenin標品と一致する明確なピークが確認されたことから、FaPT1がumbellipreninの生合成反応を触媒することを確認した。植物二次代謝に関わるO-PTはグレープフルーツ由来のbergamottin合成酵素に次いで二例目であり、またファルネシル基転移酵素は初めての例である。今後は細胞下局在性や基質特異性等の諸性質について詳細解明するとともに、本酵素を用いた物質生産について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究によりCsPT4が多様な生成物を合成可能であることを初めて明らかにすることができた。また、一般に新規な遺伝子の同定は困難を伴うものであるが、抗がん活性成分として期待されるumbellipreninの生合成酵素遺伝子を同定できており、おおむね順調に研究を遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討より、CsPT4は新規化合物を含む多数の生成物を与えたことから、これら酵素反応生成物について生物活性試験を検討する。カンナビノイドは多様な薬理活性が注目された化合物群であるが、抗がん作用、特にすい臓がんに関わる報告は少数にとどまっている。そこで本研究ではヒトすい癌細胞をターゲットとして、その栄養飢餓耐性の阻害(抗緊縮)活性を測定することで、プレニル下ポリフェノールの抗がん剤としての可能性を検討する。また、多様な基質を受容し反応できるCsPT4の構造基盤には極めて興味が持たれる。このため、分子モデリングおよびドッキングシミュレーションに基づいて酵素-基質複合体の相互作用を解明し、論理的な部位特異的変異による触媒活性コントロールを実現する。これにより、非生理的な基質に対する触媒活性を亢進し、効率的な有用物質生産を実現する。 FaPT1に関しては第一に細胞下局在性や発現の組織分布といった基礎生物学的な性質を解明する。また本酵素は植物界で初めてのO-ファルネシル転移酵素としてその触媒機能には非常に興味が持たれる。先ずは各種の芳香族化合物およびプレニル基質を用いてアッセイを行うことで、バイオテクノロジーの基盤となる本酵素の基質特異性について詳細に解明する。さらに、本酵素の生成物に関しても抗がん作用を中心に生物活性を検討して医薬資源としての可能性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究は順調に遂行できたことから、若干の次年度使用額が生じた。次年度には多数の研究項目を計画しており、その遂行に活用したいと考えている。
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