研究課題
本研究では大麻由来プレニル基転移酵素CsPT4が生理的な基質のオリベトール酸(OLA)およびGPP以外に広範な基質を受容し、新規化合物を含む多数のプレニル化ポリフェノールを生成することを明らかにした。本年度は、OLAと基本骨格の異なるフロログルシノール誘導体を基質として酵素反応を検討した結果、CsPT4はこれら基質を受容してC-プレニル化のみならず、O-プレニル化反応も触媒することが判明した。また、酵素反応生成物についてヒト膵がん細胞に対する抗緊縮活性を測定した結果、新規化合物であるO-プレニル化カルコン誘導体について、既存の抗がん剤候補天然物であるアルクチゲンニンと同様の活性を示すことを証明した。すなわちCsPT4は抗がん作用を有するプレニル化合物の酵素合成に適用可能であることを明らかとした。また、本研究で新たに同定したアギ由来O-プレニル基転移酵素FaPT1のキャラクタリゼーションを検討した。FaPT1はクマリンのumbelliferoneにFPP由来のファルネシル基を転移することで、抗がん作用の報告されたumbellipreninを合成する酵素である。本研究により、本酵素はumbelliferone以外にクマリン骨格を有するbergaptolを受容可能であり、またFPPとは鎖長の異なるGPPやGGPPをも受容可能という広範な基質特異性を示すことを明らかとした。さらに本研究では、オオケビラゴケのビベンジルカンナビノイド前駆体を合成するプレニル基転移酵素RpPTの同定とキャラクタリゼーションにも成功している。本酵素はビベンジル基質のC-ゲラニル化を触媒する酵素であるが、非生理的な基質のカルコン誘導体をも受容し、C-プレニル化とO-プレニル化の両反応を触媒した。このような性質は大麻のCsPT4と類似しており、種を超えた酵素機能のパラレルな収斂進化として興味深い。
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