申請課題では、アサ畑にみられるアレロパシー誘導メカニズムの解明を目的としている。アサが生産するTHCAがシロイヌナズナの根冠形成を阻害することから、そのメカニズムを遺伝子レベルで解明することを試みた。昨年度では、マイクロアレイ解析やReal-time PCRを実施することによりTHCA処理したシロイヌナズナにおいて4種の遺伝子(IAA20、IAA30、IAA32、IAA34)の発現上昇を確認した。 最終年度では、さらに根冠形成かかわる7種の遺伝子(IAA、IAA8、IAA17、IAA19、IAA31、ARF10、ARF10)の発現レベルをReal-time PCRで測定した。この結果、今回測定した遺伝子の発現量の変動はTHCA処理したシロイヌナズナにおいていずれも認められなかった。そこで、前年度で発現量の変動が確認された4種の遺伝子(IAA20、IAA30、IAA32、IAA34)の欠損株を用いて、THCAが根冠形成阻害を誘導するかどうか調べてみた。この結果、THCAはいずれの欠損株も根冠形成を阻害することが判明した。したがって、IAA20、IAA30、IAA32、IAA34はTHCAによる根冠形成阻害に関与してないことが判明した。IAA20の大量発現株は根冠形成阻害を誘導することが報告されているが、THCAはIAA20の発現に非依存的に根冠形成を阻害することが判明した。 以上の新しい知見に加え、THCAによる根冠形成阻害は、シクロスポリンAによって有意に抑制されることも最終年度に発見した。シクロスポリンAはミトコンドリア障害に基づくネクローシスを抑制することが知られている。したがって、THCAは根冠部のミトコンドリアに障害を誘導することにより、根冠の正常な形成を阻害するものと考えられた。 以上のように、申請者はTHCAの根冠形成阻害メカニズムを解明することに成功した。
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