研究課題/領域番号 |
21K06633
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
横須賀 章人 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (20318190)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 分子シャペロン / 熱ショックタンパク質 / 細胞毒性 / がん分子標的 / アポトーシス / 細胞周期 / 植物由来化合物 |
研究実績の概要 |
本研究では植物を由来とする新規がん分子標的治療薬シーズの探索を目的として、がん細胞の細胞周期に特異的に作用しアポトーシスの誘導をともなった細胞毒性を示す化合物を見出し、それら化合物の分子シャペロンの制御との関係を明らかにする。 本年度は、分子シャペロンのうち、熱ショックタンパク質(HSP:heat shock protein)の一つとして知られるHsp90の阻害活性試験の条件を検討した。Hsp90は、がん細胞において細胞の増殖・生存に関わる複数のシグナル伝達分子と複合体を形成し、これら分子のフォールディングを助け、がん細胞の増殖因子として働いていることが知られている。したがって、Hsp90を阻害する化合物は、がんの発生・増殖に関与する複数の標的を抑制する効果が期待される。Hsp90阻害活性試験の条件を検討するため、陽性対象であるゲルダナマイシンを用いて、SBC-3ヒト肺小細胞がん細胞に接触させた際の細胞増殖率を確認した。今後は、植物を由来とする腫瘍細胞毒性物質のHsp90阻害活性を、マイクロプレートを用いた酵素活性試験法によりスクリーニングし、活性成分を見出していく。 別途、ウコギ科、リュウゼツラン科、キンポウゲ科、イネ科、キョウチクトウ科、ヒノキ科などの植物を研究材料として用いて、植物由来の腫瘍細胞毒性物質の探索を行った。これらの植物の抽出エキスを各種クロマトグラフィーにより分離・精製し、化合物を単離した。単離化合物の構造を、NMRを中心とした各種機器スペクトルの解析と加水分解により決定した。単離された化合物のHL-60ヒト白血病、A549ヒト肺腺がん、SBC-3ヒト肺小細胞がん細胞等に対する細胞毒性を評価した。さらに、活性の認められた化合物のHL-60細胞に対するアポトーシス誘導活性の評価と細胞周期の解析を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、植物を由来とする腫瘍細胞毒性物質の探索と、Hsp90阻害活性試験の条件の検討を行った。 今年度は、キンポウゲ科Helleborus niger、ウコギ科Hedera rhombea、キョウチクトウ科テイカカズラTrachelospermum asiaticum を研究材料として用いた。HL-60、A549、SBC-3細胞に対する細胞毒性を指標に腫瘍細胞毒性物質の探索を行った。その結果、H. nigerから5種の新規化合物を含む15種の化合物を、H. rhombeaから2種の新規化合物を含む23種の化合物を、T. asiaticumから1種の新規化合物を含む3種の化合物を単離した。単離された化合物の構造を、NMRを中心とした各種機器スペクトルの解析と加水分解により決定した。また、それら化合物の各種がん細胞に対する細胞毒性を評価した結果、数種の化合物に既存の抗がん剤であるシスプラチンと同程度以上の活性が認められた。さらに、活性の認められた化合物のHL-60細胞に対するアポトーシス誘導活性の評価と細胞周期の解析を行なった。Hsp90阻害活性試験の条件を検討するために、まず、陽性対象であるゲルダナマイシンをSBC-3ヒト肺小細胞がん細胞に24、48、72時間接触させた際の細胞増殖率をMTT法により確認した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、SBC-3細胞を用いたHsp90阻害活性試験の実験条件の検討を進め、植物から単離された腫瘍細胞毒性物質のHsp90阻害活性を、マイクロプレートを用いた酵素活性試験法により評価し、活性成分を見出していく。あわせて、植物由来の腫瘍細胞毒性物質の探索を引き続き行っていく。
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