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2022 年度 実施状況報告書

分子シャペロンの制御を基盤とした植物由来新規がん分子標的治療薬シーズの探索

研究課題

研究課題/領域番号 21K06633
研究機関東京薬科大学

研究代表者

横須賀 章人  東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (20318190)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード分子シャペロン / 熱ショックタンパク質 / 細胞毒性 / がん分子標的 / アポトーシス / 細胞周期 / 植物由来化合物
研究実績の概要

本研究では、新規がん分子標的治療薬シーズの探索を目的として、がん細胞の細胞周期に特異的に作用しアポトーシスの誘導をともなった細胞毒性を示す化合物を構造の多様性に富む植物由来天然物から見出し、それら化合物の分子シャペロンの制御との関係を明らかにしていく。
本年度は、キンポウゲ科Helleborus nigerから単離された新規ブファジエノリド配糖体のSBC-3ヒト肺小細胞がん細胞に対する細胞毒性とアポトーシス誘導活性を評価した。シスプラチンまたは本化合物で24、48、72時間処理したSBC-3細胞の生存率をMTT法により算出した結果、シスプラチンは濃度および時間依存的に細胞生存率を低下させたのに対し、本化合物は濃度依存的に細胞生存率を低下させた。フローサイトメトリーによる細胞周期解析とannexin V/PI検出によるアポトーシス誘導活性を評価した結果、本化合物で72時間処理したSBC-3細胞は細胞周期をG2/M期で停止しアポトーシスを誘導した。また、ヒノキ科Thujopsis dolabrataから単離された新規ジテルペン配糖体がHL-60ヒト白血病細胞に対してアポトーシスを誘導した。
分子シャペロンは、細胞中のシグナル伝達に関与する種々のタンパク分子のフォールディングを助け、細胞の生存に関与する一群のタンパク質である。熱ショックタンパク質として知られるHsp90は代表的な分子シャペロンであり、がん細胞中では高濃度に発現し、がん細胞の生存に寄与することが明らかにされている。植物由来化合物でSBC-3細胞を処理した際のHsp90の発現を評価するための実験条件を検討した。陽性対象であるゲルダナマイシンをSBC-3細胞に接触させ、サンドイッチELISA法によりHsp90の検出を行なったところ、SBC-3細胞の増殖を抑制する濃度においてHsp90の発現が認められた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度は、植物を由来とする腫瘍細胞毒性物質の探索、単離された化合物の細胞周期解析とアポトーシス誘導活性の評価、植物由来化合物物でSBC-3細胞を処理した際のHsp90発現・阻害活性評価のための実験条件を検討した。
キンポウゲ科Helleborus niger、ヒノキ科Thujopsis dolabrata、キョウチクトウ科テイカカズラTrachelospermum asiaticum、リュウゼツラン科Yucca gloriosaなどを研究材料として用い、HL-60細胞、A549ヒト肺腺がん細胞、SBC-3細胞に対する細胞毒性を指標に腫瘍細胞毒性物質の探索を行った。単離された化合物の各種がん細胞に対する細胞毒性を評価したところ、数種の化合物に既存の抗がん剤であるシスプラチンと同程度以上の活性が認められた。植物を由来とする腫瘍細胞毒性物質の探索は順調に進んでいるといえる。
H. nigerから単離された新規ブファジエノリド配糖体で72時間処理したSBC-3細胞は、細胞周期をG2/M期で停止しアポトーシスを誘導することが確認された。
代表的な分子シャペロンであるHsp90の発現を評価するための実験条件を検討したため、今後は、SBC-3細胞に対して細胞周期を停止してアポトーシス誘導を示した植物由来化合物について、それら化合物を接触させた際の、細胞毒性と分子シャペロンによる制御との関連性を検討していく。

今後の研究の推進方策

2023年度は、植物由来の腫瘍細胞毒性物質の探索を引き続き行うとともに、単離された化合物の細胞周期解析とアポトーシス誘導活性の評価を行う。活性の認められた化合物をSBC-3細胞に処理し、分子シャペロンHsp90の発現をサンドイッチELISA法により法により評価する。さらに、Hsp90存在時におけるHsp70の発現や、Hsp90が分子シャペロンとしてフォールディングしているタンパク分子の発現を評価する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Chemical Constituents of the Leaves of Thujopsis dolabrata and Their Cytotoxicity2022

    • 著者名/発表者名
      Yokosuka Akihito、Yamada Chiaki、Saito Makoto、Yokogawa Shohei、Mimaki Yoshihiro
    • 雑誌名

      Chemical and Pharmaceutical Bulletin

      巻: 70 ページ: 720~725

    • DOI

      10.1248/cpb.c22-00286

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] キンポウゲ科植物の化学成分(39)Helleborus niger 全草から単離された bufadienolide 誘導体のアポトーシス誘導活性2023

    • 著者名/発表者名
      吉澤由佳、猪俣美菜、横須賀章人、井口巴樹、三巻祥浩
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
  • [学会発表] キンポウゲ科植物の化学成分(38)Helleborus niger 全草から単離されたecdysteroid 誘導体の構造と腫瘍細胞毒性2022

    • 著者名/発表者名
      吉澤 由佳、猪俣 美菜、横須賀 章人、三巻 祥浩
    • 学会等名
      日本生薬学会第68回年会

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公開日: 2023-12-25  

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