研究課題/領域番号 |
21K06634
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
安達 禎之 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (60222634)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スギ花粉症 / (1→3)-β-D-グルカン / デクチン-1 / 自然免疫 / 樹状細胞 |
研究実績の概要 |
1. 花粉BGのデクチン-1結合性の解析 花粉BGの分画のためスギ花粉粒の破裂後、外壁分離条件等検討した。また、(1→3)-β-D-グルカナーゼ処理外壁画分も調製し、花粉外壁及びその(1→3)-β-D-グルカン(BG)除去外壁のデクチン-1結合性を比較検討した。その結果、得られた花粉外壁にデクチン-1が結合し、グルカナーゼ処理外壁には結合しなかった。本検討でスギ花粉外壁のデクチン-1結合性はBGに依存することを確認できた。 2. 花粉BGとデクチン-1との結合におけるアンタゴニストの解析 低分子性のアンタゴニストを探索する目的で、化合物ライブラリーのスクリーニングを行った。また、デクチン-1モノクローナル抗体(mAb)や低分子性BGの結合阻害活性測定法を流用し、デクチン-1 FcとBGとの結合阻害活性をELISAでスクリーニングし、アンタゴニスト候補物質の探索を行った。その結果、今回のライブラリー(1万種)では有意な阻害剤を見出すことができなかった。一方、新たに作製したmAbは、デクチン-1とBGとの結合を阻害するアンタゴニスト活性を有することが明らかになった。 3. 花粉BGのin vitroにおける免疫細胞活性化能の解析 デクチン-1 KO 及び野生型(WT)マウスより骨髄由来樹状細胞(BMDC)、脾臓細胞等を採取、培養してサイトカイン、ケモカインの産生をELISAによって検討し、花粉および抽出物の免疫学的活性を解析した。その結果、花粉外壁による、BMDCの活性化はWTに比べデクチン-1KOで低下し、BG依存的であることが示唆された。さらにデクチン-1発現の程度が異なるマウス3系統のBMDCによるサイトカイン産生は、デクチン-1発現の程度に正の相関を示した。このことから、自然免疫応答においても花粉外壁に対する反応性に差があり、それはデクチン-1依存的であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
花粉外壁の調製法の確立、デクチン-1反応性、自然免疫応答の系統差と花粉外壁に対する反応性との相関性 など予定した解析は一通り行い、新規性のある結果が得られた。ただし、低分子化合物ライブラリーからのアンタゴニストは見出すことができなかったため、mAbに予定を変更するか、もしくは新たに他のライブラリーでのスクリーニングを行い新規アンタゴニストを探索することで、不足分を補うこととしたい。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の未解決課題である抗体以外のデクチン-1アンタゴニストの探索については、対象を他のライブラリーに切り替え引き続き行う。 予定どおり2年目の実験計画に従い、他家アレルゲンに対する花粉外壁の抗体産生アジュバント作用を解析するため、デクチン-1 KO 及び野生型(WT)マウスを用いてin vivoで実験を行い、スギ花粉外壁BG成分の獲得免疫活性化作用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染対策による入校制限のため、研究室における活動時間が短縮されたため。未執行分については、次年度の動物実験等に充当する。
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