研究課題
共生菌がキバナノセッコク(Dendrobium officinale)の幼苗の遺伝子発現及び代謝物生産に与える影響を明らかにするため、日本に自生するD. officinaleから単離された3種の共生菌(ツラスネラ科TU22及びTU27、セレンディピタ科SE1B)と幼苗をそれぞれ共培養して調査した。まず、D. officinaleの完熟種子をハイポネックス培地に無菌播種して4か月間培養した。1週間前培養した菌(TU22、TU27、SE1B)を滅菌ストローで培地ごとくり抜き、それをオートミールを含む固体培地(OMA培地)に静置した。OMA培地に4ヶ月間培養した幼苗を移植し、共培養を開始した。無菌培養の幼苗をコントロールとした。12週間共培養した後、幼苗の成長を測定した。さらに、経時的に採取した幼苗の遺伝子発現、代謝物の生産量を比較した。培養後の幼苗の新鮮重量を比較したところ、SE1Bと培養した幼苗の重量が最も重かった。D. officinaleの2つのフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)、6つのビベンジル合成酵素(BBS)及び2つのカルコン合成酵素(CHS)の遺伝子発現を解析したところ、菌毎に発現パターンは異っていた。さらに、D. officinaleから単離報告のある2つのビベンジル(Dendrophenol、Gigantol、erianin)の量をLC-MSを用いて定量した。TU22と共培養した幼苗では、コントロール(無菌培養)と比べて、エキスに含まれるDendrophenolとGigantolの量が増加していた。一方、TU27及びSE1Bと共培養した幼苗では、2つの化合物の大幅な増加は認められなかった。Erianinはどのサンプルからも検出されなかった。これら化合物以外にもコントロールと比較して増産されている代謝物が複数検出された。
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日本植物園協会誌
巻: 58 ページ: 72-76