研究実績の概要 |
本研究では前年に引き続き、抗炎症や神経保護作用が期待されるレチノイドX受容体(RXR)に焦点を絞り、当研究室で開発したRXRアゴニスト6OHAの生物活性を詳細に検討した。 結果1)6OHAと既存RXRアゴニストのベキサロテン(BEX)をマウスに経口投与した後、血清と大脳皮質を採取し、6OHAとBEXの濃度を重水素標識した6OHAを内部標準としてLC/MS/MSで測定した。その結果、6OHAは投与30分後の血清においてTmaxに達し、BEXの約6.6倍のCmax値に達した。一方大脳皮質では、6OHAは投与30分後においてTmaxに達し、BEXの約1.88倍のCmax値に達した。6OHAの血中から脳への移行率は2.60%とBEXに比べ若干低かったが、6OHAは脳内に早期に移行し、遺伝子転写を活性化できるRXRアゴニストであることがわかった。 結果2)ミクログリア様細胞MG5を6OHAあるいはBEXで6時間処理した後のmRNA発現をRNAseq法で解析した。その結果、2倍以上あるいは1/2以下に変動した遺伝子をGene Ontology(GO)解析したところ、両RXRアゴニストで変動した多くの遺伝子は、脂質代謝や炎症反応に関連したGO termに分類された。特に6OHAはBEXに比べchemotaxis、response to stimuliに分類される遺伝子群が多く、BEXに比べて炎症の惹起、収束に関連した遺伝子群の制御により深く関与している可能性が示唆された。 結果3)6OHAはarginase-1,Ccl6, Ccl17, Ccl22など炎症を収束させると考えられる遺伝子群のmRNAを6OHA処理後24時間から36時間にMG5細胞に誘導することを見出した。 以上総合的に考えると、6OHAは炎症の発症を初期に抑制する作用と炎症を早期に収束させる作用を有することが示唆された。
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