研究実績の概要 |
令和4年度は、前年度に抽出した大麻草の花穂、葉、根、茎、種子のゲノムDNAを用いて、全ゲノムバイサルファイトシークエンス(WGBS)解析を行い、各部位のメチル化プロファイルを比較するとともに、各部位に特徴的な組織特異的メチル化領域の探索を行った。 WGBS解析の結果、5部位の試料から合計1,769,878,310リードの情報が得られた。リファレンスゲノムにマッピングされた408,454,416リードについて、全試料で10リード以上読まれたメチル化候補配列(CpG:シトシン-グアニンと連続する配列、CHG:シトシン-グアニン以外-グアニンと連続する配列、CHH:シトシン-グアニン以外-グアニン以外と連続する配列の3種類)は計20,139,816箇所(CpG:1,955,706、CHG:2,971,386、CHH:15,212,724)存在した。各試料におけるメチル化率を算出し、試料間で25 %以上の差異が見られた355,737箇所(CpG:161,288、CHG:109,967、CHH:84,482)のメチル化サイトを抽出した。各試料のメチル化プロファイルを比較したところ、①花穂と葉のメチル化プロファイルは類似している、②種子のCpGおよびCHG配列はそれぞれ他の部位のCpG、CHG配列よりメチル化率が低い、③種子のCHH配列は他の部位のCHH配列よりメチル化率が高い、といった傾向が認められた。さらに、各部位の「組織特異的DNAメチル化領域」を探索したところ、709箇所(花穂:4、葉:10、根:6、茎:546、種子:143)のマーカー候補となるメチル化サイトが発見された。各部位に特異的なDNAメチル化領域が発見されたことから、当初の目的通り、大麻関連製品における違法部位(花穂・葉・根)の混入を確認するためのマーカー開発が可能であることが期待された。
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