研究課題/領域番号 |
21K06642
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
津田 真弘 京都大学, 薬学研究科, 講師 (10726813)
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研究分担者 |
山下 富義 京都大学, 薬学研究科, 教授 (30243041)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / マイクロ流体デバイス / Organ-on-a-chip / 炎症性腸疾患 / 腸管免疫 / Disease-on-a-chip / Gut-on-a-chip / 共培養 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、腸内細菌叢の破綻による炎症性腸疾患を模倣するマイクロ流体チップを作製し、治療候補薬の簡便なスクリーニング系としての有用性を検証することである。3年間の補助事業期間の2年目に当たる本年度は、腸内細菌による細胞毒性の評価と粘液による細胞保護効果の評価に取り組み、以下の成果を得た。
1. 腸内細菌による細胞毒性の評価 昨年度、マイクロ流体チップ上において、腸管上皮細胞のモデルであるCaco-2細胞と杯細胞のモデルであるHT29-MTX細胞を播種した共培養細胞に対し、2種の腸内細菌を処置することで細胞のバリア機能に影響を与えることを明らかにした。今年度は、細胞に対する細胞障害性を評価した。ヒト腸から単離した常在性細菌であるLactobacillus rhamnosus GG (LGG)ではLGG播種3日後においても死細胞はほとんど観察されなかったのに対し、腸管侵入性大腸菌EIECを処置した場合では12時間後に死細胞が観察された。これにより、開発した腸チップが2種細菌の細胞障害性の違いを再現できるものであることが示された。
2. 粘液による細胞保護効果の評価 上記の共培養細胞に対して、Dithiothreitol(DTT)を処置することで粘液を除去し、EIECの細胞バリア機能に与える影響について評価した。FITC-デキストランを用いて細胞透過性を評価した結果、EIEC非処置群と比較してEIEC処置群においてデキストランの透過性が有意に上昇した。さらに、そのEIEC処置群に対して、DTTによって粘液を除去した群では有意にデキストランの透過性が上昇した。よって、本腸チップにおいて、EIECが及ぼす細胞バリア機能への障害に対し、粘液が保護的に機能することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目の目標は、免疫細胞をマイクロ流体チップの下側流路内で培養し、腸管免疫を再現できるチップを確立することであった。 免疫細胞については、ヒト単球由来細胞株THP-1を用い、プレート上でマクロファージに分化させた後にリポ多糖LPSで刺激を与えると炎症性サイトカインを放出するところまでは確認をしているが、マイクロ流体チップ上においての実証が出来ていない。以上より、本研究の進捗はやや遅れていると考えている。 一方で、当初の計画では予定していなかった粘液による細菌からの細胞保護効果を示すことが出来たため、2年目の成果はあったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、免疫細胞を搭載して腸管免疫を再現できる腸チップの確立を目指し、抗炎症性薬剤の効果を再現できるかを確認する。免疫応答の確認のため、リポ多糖LPSにより刺激を与え、その際に炎症性サイトカインであるIL-1β、IL-6、TNF-αなどの分泌をELISAで確認する。また、腸内細菌叢が破綻した際に腸管バリア能の破綻とそれに伴う腸管免疫応答の惹起が見られるかを確認する。これに対し、抗炎症作用を有する薬剤を処置することで、抗炎症作用をチップ上で再現できるかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)免疫応答の際に生じる炎症性サイトカインを測定するためのELISAキットを購入予定であったが、研究の進捗の影響で予定より使用量が少なめであったため。
(使用計画)補助事業3年目は免疫応答の評価が中心になるため、年度内に使用予定である。
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