研究課題/領域番号 |
21K06643
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
佐能 正剛 和歌山県立医科大学, 薬学部, 准教授 (00552267)
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研究分担者 |
古武 弥一郎 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (20335649)
太田 茂 和歌山県立医科大学, 薬学部, 教授 (60160503)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 薬物性肝障害 |
研究実績の概要 |
医薬品毒性の要因として多いものが「薬物性肝障害」に分類される特異体質毒性である。毒性発現に起因する「特異体質」については分かっていないことが多く、ヒトにおける薬物性肝障害の発現予測、臨床診断および治療法は十分に確立されていない。一方で、薬物性肝障害を引き起こす医薬品には、腸内細菌叢を変化させるものが含まれていることを鑑みると、それが毒性発現の引き金となっている可能性がある。そこで本研究では、腸内細菌叢プロファイルから、「特異体質」となる「肝障害の感受性、重症度、回復度の指標」を探索する。その中で、薬物性肝障害を特徴づける腸内細菌叢プロファイル「腸内細菌叢のカタログ化」を確立していく。さらには、肝機能に影響を与える腸内細菌の代謝産物を同定することで、「腸管-肝臓の臓器間連携」による新しい毒性発現メカニズムを明らかにすることを目的とする。 薬物性肝障害を惹起するリファンピシンは、部分肝切除したマウス肝臓に対し、肝再生を遅延させる傾向が観察されていた。また、腸内細菌による代謝物2次胆汁酸濃度が減少していたことから、腸内細菌叢のかく乱が要因と考えられた。リファンピシンはマウスにおいて、脂質を増加させる現象が観察されているが、この脂肪肝毒性にも腸内細菌が関与している可能性が考えられた。リファンピシンの構造類縁体であるものの経口吸収性がほとんどないとされるリファキシムを用いることで、薬剤の肝臓への分布を排除しながら腸内細菌の関与を肝再生能、薬剤性脂肪肝の観点から検討している。また無菌マウスにリファンピシンを投与し、腸内細菌を除くことによる肝毒性発現の増強の可能性についても検討している。さらには、薬物性肝障害を惹起することが知られる医薬品のうち、脂肪肝毒性評価系を立ち上げ、その他の評価化合物の選定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸内細菌と肝毒性発現の関係性を調べるため、脂肪肝毒性を指標に、in vitroおよびin vivo実験を通してリファンピシン以外の評価化合物の選定を行った。その中で、薬物性脂肪肝の毒性評価系としての提案も可能となり、得られた知見は学会発表にて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、肝再生能の変化と脂肪肝毒性を指標に腸内細菌の関与を調べていく。その上で、通常のマウスだけでなく、肝臓がヒト化されたヒト肝細胞キメラマウスを用いて腸内細菌と肝臓に対する影響を調べ、ヒトに対する毒性影響についても精査していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、リファンピシンを検証化合物を用い、腸内細菌と肝再生能との関連性について主に研究を進める予定であったが、肝毒性のうち脂肪肝毒性にフォーカスし評価化合物の選定などにも注力したため、次年度使用額が生じた。次年度は、腸内細菌の関与に注力して研究を進めていく予定である。
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