医薬品毒性の要因として多いものが「薬物性肝障害」に分類される特異体質毒性である。毒性発現に起因する「特異体質」については分かっていないことが多く、ヒトにおける薬物性肝障害の発現予測、臨床診断および治療法は十分に確立されていない。一方で、薬物性肝障害を引き起こす医薬品には、腸内細菌叢を変化させるものが含まれていることを鑑みると、それが毒性発現の引き金となっている可能性がある。そこで本研究では、腸内細菌叢プロファイルから、「特異体質」となる「肝障害の感受性、重症度、回復度の指標」を探索する。その中で、薬物性肝障害を特徴づける腸内細菌叢プロファイル「腸内細菌叢のカタログ化」を確立していく。さらには、肝機能に影響を与える腸内細菌の代謝産物を同定することで、「腸管-肝臓の臓器間連携」による新しい毒性発現メカニズムを明らかにすることを目的とする。 検証化合物として、胆汁うっ滞毒性や脂肪肝を惹起することが知られるリファンピシンおよびその比較対象として構造類縁体であるリファキシミンを用いた検討を行ってきた。リファキシミンは、経口吸収性がほとんどないことから薬剤の肝臓への分布の関与を排除して腸内細菌との関連性を検討できるものと考えた。その結果、リファキシミンはマウスの肝再生関連遺伝子の発現を変化させることが示唆された。リファキシミンはマウス腸内細菌叢をかく乱させることが確認できており、腸内細菌が肝機能に影響を与えている可能性が考えられた。腸内細菌代謝物の中で、肝機能に影響を与える可能性がある内在性物質も絞りこみができており、今後、ヒト化マウスも合わせて用いることで、マウスとヒトの種差も考慮した評価を展開していく。
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