研究課題/領域番号 |
21K06644
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
永田 健一郎 九州大学, 大学病院, 薬剤師 (30812896)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 処方チェックシステム / 機械学習 |
研究実績の概要 |
医療現場では,予め定義したルールに基づき医師の処方内容をチェックする処方チェックシステムが広く導入されている。しかし,医薬品の用量については,患者の年齢・体重に加えて,様々な種類の臨床検査値に応じた設計が必要となるため,既存の手法では十分なルールを定義することが難しい。医薬品の用量に関する処方ミスは,患者の重篤な健康被害を引き起こすことから,実用性の高い用量チェックシステムの開発が望まれている。本研究では,近年,様々な分野で注目されている機械学習の技術を応用することで,電子カルテデータを基に臨床検査値に応じた正常な処方パターンを自律的に学習させ,異常な処方(過量投与・過少投与)を高精度に検出するシステムを構築するものである。 当該年度に実施した研究内容は,下記の通りである。 1.学習データの抽出・前処理 九州大学病院の電子カルテシステム(HOPE EGMAIN-GX,富士通株式会社)から,処方データ,および各種臨床検査値データを抽出した。次に,処方時点における患者の年齢・体重,および直近の臨床検査値データについて,個々の処方データへの紐づけ作業を行った。この際,一日用量が明らかでないもの(全量入力された処方など)や,年齢・体重に欠損値を含むものは学習データから除外した。 2.各種臨床検査値データと医薬品の用量との相関関係の分析 個々の医薬品について,各種臨床検査値データ(腎機能,肝機能,骨髄機能,電解質,薬物血中濃度等)と医薬品の用量との相関関係を分析し,機械学習モデルの特徴量に加えるべき因子の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各種臨床検査値データと医薬品の用量との相関関係の分析に想定よりも時間がかかったため。
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今後の研究の推進方策 |
各種臨床検査値データと医薬品の用量との相関関係の分析を行い,機械学習モデルの特徴量に加えるべき因子を決定する。また,機械学習による異常検知の代表的なアルゴリズムである,One-class support vector machine,Isolation forest,Local outlier factorを用いて,医薬品の用量,年齢,体重,各種臨床検査値データを基に機械学習モデルを構築する。新規処方データを構築した機械学習モデルに適用し,異常データを検出するとともに,薬剤師が必要な介入を実施することで,用量の処方ミスに起因する医療過誤(インシデント・アクシデント)を減少させることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析用コンピューターを予定よりも少額で購入できたことから,次年度使用額が生じた。研究の進展に伴い,データ解析に必要なソフトウェア・ハードウェアが新たに発生する可能性が高く,次年度使用額を用いての購入を検討している。
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