研究課題
初年度は、コルチソール代謝活性を反映するバイオマーカーとして尿中コルチゾール/コルチゾン比(GC比)に影響する可能性があるメチル化部位とHbA1cとの関連について検討した。GC比が11βHSDの活性化を反映しているという報告から、CYP11B1の6つのCpGアイランドのメチル化とHbA1cとの関連を検討した結果、高いHbA1cレベルと関連するCYP11B1のメチル化部位としてcg25376393を見い出した。また、糖尿病患者における睡眠薬の服用率が高かったことから、糖尿病罹患と合併症の間に不眠症が介在する可能性を考え、不眠症治療の長期的予後について検討した。その結果、不眠症治療を受けている者の死亡リスクは高く、特に循環器疾患に起因すること、男性、60歳未満の死亡リスクが高いことを見つけた。最終年度は、糖尿病の罹患による11βHSD調節不全が、高血圧の発症に関与して循環器疾患に寄与していく可能性を考え、糖尿病患者における高血圧症の発症にGC比が予測マーカーとして活用できるかについて検討した。6931名について解析した結果、性、年齢を補正した糖尿病患者の高血圧のオッズ比は高く、教育歴、ストレス、喫煙、飲酒、食塩摂取、身体活動を補正しても同様であったが、脂質異常症、BMIの補正により関連は弱まった(OR 1.33; 95% CI, 1.08-1.64)。さらに、すべての因子を補正したGC比レベル(低、中、高)による層別解析では、GC比レベル低、中群で有意な関連は示されなかったが、高いGC比レベル群では糖尿病患者において高血圧を合併しているオッズ比が有意に高かった(OR 1.97; 95% CI, 1.32-2.94)。これらの結果から、11β-HSD調節不全を介した病的なMR活性が糖尿病と高血圧の合併に関与している可能性が考えられる。
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