研究課題
本研究の目的は、副作用ビッグデータを用いて、医薬品により引き起こされるうつ病の原因薬剤とそのリスクを抑制する治療薬を見出すことである。令和5年度は、副作用ビッグデータと生命科学ビッグデータを融合させたデータ駆動型解析を用いて医薬品と関連する遺伝子及び蛋白質を探索を行った。さらに、機械学習を用いたうつ病などの精神疾患の新しい有害事象予測手法を検討した。本研究では、副作用ビッグデータをさまざまな解析軸で解析しており、臨床に有用な医薬品適正使用に役立つ知見を見出した場合は、遅滞なく社会に公表する。
3: やや遅れている
米国食品医薬品局 (FDA)の有害事象自発報告データベース(SRS)であるFDA Adverse Event Reporting System (FAERS) から、モンテルカストと薬剤惹起性うつ病(DID: drug-induced depression) との関連性を示唆する結果を得た。DID発症リスクと遺伝子情報データベースを組み合わせて薬剤と相互作用のある遺伝子・蛋白質を探索しエンリッチメント解析を行った。SRSデータセットを用いて、うつ症状やせん妄などの精神疾患系の有害事象発生群と非発生群の群分けを行い、両群のサンプルサイズの不均衡に対しては、オーバーサンプリングの代表的手法であるSynthetic Minority Oversampling Technique(SMOTE)を適用して少数群の拡張を試みた。Training data より年齢、性別、医薬品名、投与量、原疾患等を変数とし、決定木分析(Decision Tree : DT)や勾配ブースティング決定木(Gradient Boosting Decision Tree : GBDT)を用いて有害事象発現を予測するモデルを構築した。Test data によりAccuracy(正解率)、Precision(適合率)、Recall(再現率)等の指標を用いてモデルの適合性を評価した。また、SRSをさまざまな解析軸で解析する際に、臨床に有用な医薬品適正使用に役立つ知見を見出した場合は論文、学会で公表している。
種々の患者背景及び併用薬による有害事象リスク抑制機序を検討する。また、機械学習による有害事象予測を行う。データ駆動型解析から得られた仮説をin vivoの遺伝子発現解析で検証することにより、現在の薬剤惹起性うつ病(DID)治療薬の選択にエビデンスを与えるとともに新たなDID治療薬の発見を目指す。勾配ブースティング決定木(GBDT)を元にした機械学習アルゴリズムLightGBMは、大規模なデータセットに対して高速かつ精度が高い予測を可能にする。うつ病の予測モデル作成に、解剖学的治療化学(ATC)分類の69種類の薬剤、年齢、性別を説明変数として用い、DID発症を目的変数として予測モデルの構築を目指す。予測モデルの評価指標は正解率、適合率、再現率、F1スコアを用い、さらにSHapley Additive exPlanations (SHAP)を用いて、予測モデルにおける各説明変数の寄与度を可視化することを予定している。
英文原稿校正の予定が若干遅れ次年度繰越しとなった。令和6年度は、英語論文作成および掲載費用、in vivo研究用の試薬購入を行う。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 8件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (9件)
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