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2022 年度 実施状況報告書

免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象の管理目的バイオマーカーの探索

研究課題

研究課題/領域番号 21K06648
研究機関北海道科学大学

研究代表者

町田 麻依子  北海道科学大学, 薬学部, 准教授 (50347788)

研究分担者 山 佳織  北海道科学大学, 薬学部, 講師 (60780559) [辞退]
今田 愛也  北海道科学大学, 薬学部, 教授 (10557945)
佐藤 秀紀  北海道科学大学, 薬学部, 教授 (80711829)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワード免疫疲弊 / 免疫チェックポイント阻害剤 / Nr4a1
研究実績の概要

がん免疫チェックポイント阻害剤治療において、適切な治療評価を補完し致命的な転機を防止する為に、免疫応答に関わる血中バイオマーカーの探索と有用性評価の為の前向き観察研究を行なっている(北海道科学大学倫理委員会承認番号19-01-009号)。
2022年度はペムブロリズマブによる重篤な免疫関連有害事象(irAEs)を発症したにも関わらず、劇的に肺がん治療が奏功した症例を経験した。本症例の希少性と臨床上の重要性の観点から、先行して症例報告を行った(海外論文及び学会報告)。
本症例は、ペムブロリズマブの単回投与によりスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)発症したが、SJS症状の消失後がんの完全寛解が得られた事例である。
本SJS例を、対照としてSJS例と癌腫背景を同じくするirAE非発症-治療奏功例、及び同-増悪例と比較検討した。血漿中のサイトカイン及び末梢血単核細胞由来のT細胞マスター転写因子群mRNAのモニタリングから、SJS例の特徴として免疫疲弊によるアネルギーを調節する核内受容体転写因子(Nr)4a1の関与が明らかとなった。
重回帰分析から、SJSの病型を規定する急性期のIFN-γ増加とIL-10の抑制による免疫応答には、Nr4a1減少による免疫疲弊の抑制が示され、ペムブロリズマブ濃度およびSJSの支持療法によるプレドニゾロンが有意な影響を与えていた。このアネルギーの抑制は、非SJS治療奏功例と同様に認められた。非SJS治療増悪例では、IFN-γの著増に対するNr4a1による調節の寄与が相対的に小さいことが示された。また、IFN-γの変化率を疲弊の指標とした場合に、疲弊軽減によるIFN-γの変化率増大に対して、Nr4a1が抑制的な強い因子として、リンパ球血小板比が促進的な強い因子として寄与率59%の影響因子として抽出された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

Covid-19感染症の流布の影響から、入院にて肺がん治療を行う患者数の減少がみられ、本臨床研究におけるエントリー数が当初予定より減少した。従って、肺がん例の臨床研究については研究期間の延長手続きを行い、目標症例数に達すべく患者のリクルートを継続している。一方、肺がん例の対照である非肺がん例(肝細胞がん)のリクルートを実施したが、非肺がん例のエントリー状況は良好である。
末梢血単核球由来のmRNAの測定は、ランニングコストの増加率は低く、計画的に実施している。しかし、ランニングコスト増加率が高い測定についての進捗は良好ではないが工夫して対応している。サイトカインは2022年度当初の在庫が得られた分を使用して、現在までの症例の測定を行なった。マイクロRNA(miRNA)測定用のキット及びプライマーアッセイについて、ウクライナ情勢によりQIAGEN製品のコストアップが著しく、割高である定期的測定から、サンプルを纏めた一括測定によるコスト削減を行うべく工夫している状況であり、患者エントリー状況の影響を大きく受けた。
従って、研究成果については現状で得られた希少症例を中心とした症例報告を行うのみに留まっている。

今後の研究の推進方策

2023年度は、Covid-19感染症の扱いが5類に変更となることから、入院にて肺がん治療を行う患者数の回復が期待される。臨床研究の観察期間の延長手続きが完了しており、臨床研究のエントリー数の回復が得られる様に、共同研究医療施設と連携をとり患者のリクルートを継続し動向を慎重に判断する。
また、必要時には新施設で研究を展開できる様に、臨床研究のプロトコールについて倫理審査申請の準備を行う。
サイトカインの測定は、当初予定製品から同等グレードの他社製品へ変更しつつ、サンプルを纏めた一括測定してコスト削減にて対応する。マイクロRNA(miRNA)測定用のキット及びプライマーアッセイについても、同様に割高である定期的測定から、サンプルを纏めた一括測定によるコスト削減を行う。研究の進捗へのダメージを下げる為に、一括測定に備えて、血漿及び末梢血単核球からのtotal RNA抽出については、随時継続する。

次年度使用額が生じた理由

主な要因としては、新型コロナ感染症の流布による2022年度の臨床研究エントリー患者数が予定よりも少なく、サンプル数が順当には得られにくかった事があげられる。
更に、ランニングコストが高い測定に関して、ウクライナ情勢の影響を受けた輸入キット試薬価格の高騰が認められた。従って、経費節約を図る為に、随時または一定数毎の定期的な測定よりもコストパフォーマンスが最も良い測定方法であるサンプル数を纏めた一括測定に切り替えた。従って、miRNAの測定に関しては、2023年度に測定を見送る必要性が生じたことから、繰越が発生した。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] A case report involving suppressed nuclear receptor transcription factors 4a1 and Stevens-Johnson syndrome induced by a single dose of pembrolizumab and successfully treated with early steroid administration, resulting in complete remission of stage III lung cancer2022

    • 著者名/発表者名
      Maiko Machida, Chika Yamazaki, Nao Kouda, Yousei Hanai, Hideki Sato, Ainari Konda, Yuka Yamagata, Tatsuya Itoh, Haruhiko Aisaka
    • 雑誌名

      Journal of Pharmaceutical Health Care and Sciences

      巻: 8 ページ: 8:29

    • DOI

      10.1186/s40780-022-00261-y

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 肺扁平上皮がん患者における血中Nuclear Receptor Transcription Factor 4a1 mRNAの抑制と Pembrolizumabによる治療の反応性の検討(症例報告)2023

    • 著者名/発表者名
      幸田 直、町田 麻依子、山崎 千佳1) 、花井 耀生1) 、竹市 雄、豊田 裕人、佐藤 秀紀、今田 愛也、山形 優華、井藤 達也、梅田 泰淳、相坂 治彦
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会

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公開日: 2023-12-25  

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