研究課題/領域番号 |
21K06652
|
研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
小池 伸 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (70751014)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | メチルグリオキサール / カルボニル化タンパク質 / 統合失調症 / プロテアソーム / オートファジー / 終末糖化産物 |
研究実績の概要 |
メチルグリオキサール(MGO)は生体内で生成される反応性の高いカルボニル化合物であり、タンパク質のアルギニン残基やリシン残基と反応すると、やがてカルボニル化タンパク質の生成が誘導される。生体内におけるカルボニル化タンパク質の過剰な蓄積は末梢疾患の発症のみならず、パーキンソン病やアルツハイマー病の発症に関与している可能性が示唆されている。また、最近では一部の統合失調症患者の血中にカルボニル化タンパク質が高度に蓄積していることも明らかとなり、カルボニル化タンパク質の蓄積と中枢性疾患との関わりも注目されている。本検討ではこれまでに、神経系培養細胞にMGOを処理することでカルボニル化タンパク質の蓄積と、その時間依存的な減衰を確認しており、これには主に20Sプロテアソームが関与していることを示している。今年度は主にマウスを用いた検討を行った。具体的にはマウス脳内にMGOを投与して脳を摘出後、脳内のカルボニル化タンパク質を検出した。その結果、マウス海馬において終末糖化産物の一種であるMG-H1化されたタンパク質の顕著な蓄積が認められた。この蓄積を経時的に観察すると、24時間以内にMG-H1化タンパク質の蓄積は減少した。この結果は、in vitroの検討と同様な結果であったことから、マウス海馬内においてもin vitroの検討で明らかにしたカルボニル化タンパク質の分解機構によってMG-H1化タンパク質が分解したと思われる。また、MG-H1以外の終末糖化産物の評価も行ったところ、カルボキシエチルリジン化タンパク質の蓄積はMG-H1化タンパク質よりも遅れて起こり、その消失度合いにも差があることが解った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度のin vitroの検討結果をもとに今年度はin vivoの検討を行った。マウス脳内にMGOを投与したところin vitroでの検討と同様の結果が得られたことから、哺乳動物の神経系ではカルボニル化タンパク質は主に20Sプロテアソームで分解されることが示唆された。このことから、当初の予定通り、カルボニル化タンパク質の分解機構に注目した統合失調症の発症機序の解明に向けた研究を次年度より遂行していく。
|
今後の研究の推進方策 |
統合失調症患者由来のiPS細胞を用いて、カルボニル化タンパク質の蓄積状態を検討する。また、カルボニル化タンパク質の蓄積が認められた場合は、そのタンパク質をLC-MS/MSによって同定する。さらにそのタンパク質のカルボニル化がその機能に与える影響や、タンパク質分解機構とのかかわりを明らかにすることで、神経系におけるカルボニル化タンパク質の蓄積によって誘導され得る疾患発症のメカニズムを考察していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現在、今年度の結果をまとめて論文投稿準備中であり、繰り越し分は今年度論文投稿する際の論文投稿料に充てたい。
|