研究課題/領域番号 |
21K06653
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研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
亀卦川 真美 横浜薬科大学, 薬学部, 助教 (30896626)
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研究分担者 |
福田 秀子 (曽根秀子) 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (60280715)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / 生薬人参 / ジンセノサイド / ヒトiPS細胞 / ヒト脳オルガノイド / 有害事象自発報告データベース |
研究実績の概要 |
生薬人参主成分ジンセノサイド類及び代謝物に着目し、神経保護作用の機序解明を目標に研究を進めた。具体的には、脳保護作用に関与していると考えられているエストロゲン受容体とのリガンド・受容体相互作用、相互作用活性を、ジンセノサイドRg1及びジンセノサイドRb1の代謝物PPD及びPPTについて統合計算化学システムを用い解析した。その結果、部分的にエストロゲン受容体アゴニスト作用の役割を果たすことを明らにした。また、MCF-7細胞を用いた培養実験により、PPD及びPPTを処置し細胞増殖及び次世代シーケンシングによるトランスクリプトーム解析によりエストロゲン受容体活性シグナルの作用を調べた。その結果、PPD及びPPTがエストロゲンアゴニスト活性だけでなく、神経保護効果および抗炎症作用を示すことが示唆された。並行して、医薬品副作用データベース(JADER)を用いて人参含有漢方処方から有害事象の発生頻度によるオッズ比を指標にして、ボルケーノプロットを作成し、有害事象の分類と本来の使用目的との比較検討を行った。この解析により、神経変性疾患に有用な人参含有漢方処方の抽出を行った。さらに、ヒト脳神経細胞を用いた人参含有漢方処方及びジンセノサイド類の神経変性に対する薬理作用の検証を行うため、ヒトiPS (hiPS)細胞からなる脳神経オルガノイドの育成を行った。再現性のあるヒト脳オルガノイドの育成によりヒト脳組織の発生モデルを作成できた。既に薬物評価ができる段階まで育成が進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画全体として順調に進んでいる。研究計画の一連の流れをモデル構築することができたことが進捗に大きく影響している。上述の通り、(1)神経保護作用のある漢方薬の探索(2)ヒトiPS細胞から神経細胞への分化及びヒト脳オルガノイドの育成を行っており、(1)についてはデータ数の問題で信頼できるシグナル検出の構築に時間を要しているため次年度の課題となっている。一方、(2)においては、薬物評価ができる段階まで育成が進んでおり実験成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
概ね順調に進展しているため、当初計画に準じて進めていく。特に、神経保護作用のある漢方薬の探索及び生薬人参のシグナル検出の構築を推進させ、初年度に構築した実験系に導入していくことを目標とする。 (1)有害事象自発報告データベースから抽出された神経保護作用のある漢方薬を多変量解析などの統計的手法を用いて原因生薬を探索する。しかし、神経変性疾患及び漢方薬の報告数が少なく漢方薬が抽出されにくいことが課題である。そのため、漢方薬以外の医薬品も対象とし人参代謝物との構造類似性から薬理作用を類推する。その後、抽出された候補化合物に対する転写因子(核内受容体)を探索し作用機序の予測を行う。(2)神経変性に関わる医薬品及び漢方薬との相互作用をドッキングシミュレーションなどの手法を用いて確認していく。(3)これまでのin silico実験をin vitro実験で検証していく。脳神経細胞及びヒト脳オルガノイドを用いて神経変性誘発の特徴を形態的変化及び生化学的変化から評価する。(4)マイクロアレイ分析を用いて遺伝子発現データを抽出しバイオインフォマティクスツールを用い標的分子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
神経保護作用のある漢方薬の探索するために統計ソフトの使用が必須である。また、ビッグデータを取り扱うためメモリの増設やPCメンテナンスが必要である。ヒトiPS細胞の維持や神経細胞への分化及びヒト脳オルガノイドの育成のための培養液や試薬が必要である。検証実験を行う際には試薬や遺伝子発現解析や脱分極ミトコンドリアの検出をおこなうためにシトクロム c 量の測定試薬が必要である。
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