研究課題
網膜疾患は中途失明の主たる原因であるが、現在の点眼薬では眼後部に位置する網膜に十分な薬物量を送達することが難しいのが現状である。本研究ではこれら課題を克服すべく、薬物ナノ結晶を装填したin situゲル化ナノ点眼液の処方設計を検討し、従来点眼液以上の眼内への薬物送達が可能であることを見出した。また、眼疾患モデルを用い、これら点眼製剤の有用性について評価し、STZ網膜障害モデルの眼後部障害が点眼により改善可能であることを見出した。1) In situゲル化ナノ点眼液の処方設計とその物性評価: ブレイクダウン法(乾式・湿式ビーズミル法)にて、トラニラスト、イルベサルタン、ブリンゾラミド、ニルバジピン、フロセミド、フェノフィブラート、ラノステロールのナノ粒子化に成功した。また、メチルセルロース、カルボポール、Pluronic F-127及び68を始めとした温度応答性in situゲル基剤と湿潤剤であるチロキサポールをナノ結晶製剤に同時適用した際の粘性変化や現表面での薬物滞留性の測定を行った。さらに、ナノ結晶のゲルからの放出挙動と膜透過性について測定し、in situゲル化ナノ点眼液にチロキサポールを加えることで、高い分散安定性と眼内移行性が得られることを明らかとした。2) In situゲル化ナノ点眼液の眼疾患治療への有用性: これまでin situゲル化ナノ点眼液が高い角膜透過性と、眼内移行性を明らかとしたため、眼疾患であるドライアイと糖尿病性網膜症をターゲットに薬効評価を行った。その結果、トロキシピドをナノ製剤化した点眼液点眼によりドライアイ症状が劇的に修復することが見出された。さらに、チロキサポール配合ブリンゾラミドナノ点眼製剤点眼が糖尿病モデルの網膜電図(ERG)障害を改善することを明らかとした。
https://www.phar.kindai.ac.jp/pharmtec/index.html
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