2022年度に、透析膜を装着させたin vitro消化/膜透過システムにより種々の脂質製剤(Lipid-Based Formulation: LBF)からのシンナリジン(CNZ)の経口吸収性予測を試みた。 しかし、十分な予測精度は得られなかった。この原因は実際の薬物膜透過速度をin vitroシステムで正確に再現できなかったためと推察された。2023年度は、この問題を改善した新規in vitro消化-in situ吸収モデルを構築し、先行研究と同様のLBFを用いてCNZ経口吸収性予測を試みた。 人工腸液中で種々のLBFを一定時間撹拌後、豚パンクレアチンを添加した。10分撹拌後、各サンプルをラットに注腸投与し、大腿動脈カニューラから経時的に採血を行った。薬物の膜透過速度を再現するためには、膜の表面積と薬物が溶解した水分量の比を再現することが重要である。ラットの小腸内水分量は約3 mL、小腸の表面積は約81.4 cm2と報告されているため、投与液量は小腸表面積27.1 cm2あたり(小腸の長さ24 cmあたり)1 mLとした。 in vitro消化-in situ吸収モデルにより測定した血漿中濃度時間曲線下面積(AUCloop)とin vivo経口AUCとの間には良好な相関 (R2=0.71)が得られ、透析膜を用いた方法(R2=0.087)よりも予測精度の向上が見られた。従って、LBFからの薬物経口吸収性を予測する場合、小腸膜表面積/水分量比を再現したモデルを構築することが重要であると考えられた。
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