研究課題
さまざまな領域において医学、薬学発展が進み、薬についても新規の作用機序を持つ画期的な医薬品が相次いで開発される中、いまだ多くのがん化学療法に古典的な抗がん薬であるシスプラチン(CDDP)などのプラチナ系薬剤が用いられている。プラチナ系抗がん薬の投与を受けた患者の約1/3には用量制限因子となる急性腎障害(Acute Kidney Injury:AKI)を合併する。AKIは不可逆的な腎障害につながり、後の治療や予後に支障をきたす原因となる。よってAKIを未然に回避するためのバイオマーカーの実用化が急務である。そこで本研究では新たなバイオマーカーの候補としてL-FABP(Liver type fatty acid protein)に着目し、より早期の腎障害モニタリング法の開発を目指して着手した。初年度であるR3年度はまず尿中L-FABPの取扱いについての注意点を明らかにするため安定性についての検討を実施した。まず、実際の患者検体を得た後の搬送、保管条件について検討するため、健常成人の尿を用いて尿サンプルを室温および保冷条件下に0~24時間置いた時の継時的なL-FABPの濃度変化を検討した。その結果、常温におけるL-FABPの安定性に懸念があると考えられ、尿検体について-80℃に保存することとした。R4年度は患者検体を収集するため、主に食道がん患者を対象としてFP療法(シスプラチン+5FU)を施行する患者を抽出し尿検体および保険診療の範囲内で生じる血液残検体を入手した。コロナ禍による入院患者の調整や感染対策上の理由から検体採取に限界があり症例数は伸び悩んでいる。これら検体について、L-FABP、血清クレアチニン、尿中クレアチニン、血清シスタチンCなどの項目を免疫学的測定法により定量し解析を実施することとした。
4: 遅れている
コロナ禍による臨床業務の増大および入院患者数の調整により対象となる患者が減少したため
引き続き次年度も検体採取を継続して症例を蓄積し、研究を進めていく予定とする。これに関しては感染症の状況は受けるものの病棟側とも相談して少しでも多く検体確保をするよう対策を協議していく。また、研究成果の発表についても予定していく。
情報収集のため参加を予定していた海外学会の開催が1年延期となり、執行予定額のうち当該旅費相当分が次年度使用額として生じた。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Oncol Lett
巻: 23 ページ: -
10.3892/ol.2022.13271