研究課題/領域番号 |
21K06668
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
湯元 良子 広島大学, 医系科学研究科(薬), 准教授 (70379915)
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研究分担者 |
高野 幹久 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (20211336)
川見 昌史 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (20725775)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肺胞上皮細胞 / PEPT2 / 自然免疫応答 / ステロイドホルモン |
研究実績の概要 |
H441細胞を播種1日目以降、9日目まで通常の5% FBS、デキサメタゾン (200 nM)およびITS supplement含有RPMI1640培地 (Medium B) で培養した後、9日目から4日間、ステロイドホルモンであるデキサメタゾンおよびブデソニド(いずれも20~100 nM)で処置し、13日目にPEPT2の機能・発現およびPEPT2介在性自然免疫応答に及ぼす影響について検討した結果、H441細胞におけるβ-Ala-Lys-AMCA取り込みは有意に阻害され、PEPT2およびNOD1のmRNA発現も有意に阻害された。さらに、iE-DAP処置によるIL-8の培養上清中への分泌量の増加もデキサメタゾンおよびブデソニド (各50 nM) 共処置によって有意に抑制された。以上の結果から、吸入ステロイド薬によって肺におけるPEPT2のmRNA発現および機能が阻害され、NOD1を介した自然免疫応答も抑制される可能性が示唆された。 一方、PEPT2タンパク質発現に対する影響を検討した結果、予想に反してPEPT2タンパク質発現は吸入ステロイド薬によって有意な変化が認められなかった。従って、吸入ステロイド薬によるPEPT2機能の抑制には発現以外のメカニズムが関与していることが示唆された。そこで一つの可能性として、PEPT2の駆動力であるプロトンの電気化学的勾配の維持を担っているSodium/Hydrogen Exchanger (NHE)に対する吸入ステロイド薬の影響についても検討する予定である。 また、H441細胞を播種1日目以降、11日目までMedium Bで培養し、11日目から48時間、肺障害性薬物であるメトトレキサート (10-3000 nM)で処置したところ、顕著な細胞毒性は認められず、β-Ala-Lys-AMCA取り込みにも有意な変化は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画通り、H441細胞におけるPEPT2の発現・機能およびPEPT2介在性自然免疫応答に対するステロイドの影響について解析できたため。
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今後の研究の推進方策 |
吸入ステロイド薬によって肺におけるPEPT2のmRNA発現および機能が阻害され、NOD1を介した自然免疫応答も抑制される可能性が示唆されたが、PEPT2タンパク質発現には変化が認められなかったことから、発現以外のPEPT2機能阻害メカニズムについて解析し、その防御法についても検討する。 また、肺障害性薬物であるメトトレキサートによってH441細胞におけるPEPT2の機能・発現およびPEPT2介在性自然免疫応答に影響が認められなかった。これまでの我々の研究では肺障害性薬物であるメトトレキサートおよびブレオマイシンの上皮間葉転換誘発メカニズムが異なっている可能性が示唆されていることから、PEPT2に対する影響も異なることが考えられるため、PEPT2の機能・発現に対するブレオマイシン処置の影響についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究はおおむね順調に進展しているが、PEPT2の機能・発現に対するブレオマイシン処置の影響に関する研究を次年度に移行させたため、研究費の一部を次年度に繰り越した。 加えて、次年度ではPEPT2機能に対するステロイド薬の抑制機構の解明を試みる予定である。
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