研究課題/領域番号 |
21K06677
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
杉山 恵理花 昭和大学, 薬学部, 准教授 (50302732)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 13C-リドカイン / 13C-呼気試験 / 薬物動態変動 |
研究実績の概要 |
我々は、迅速・簡便性や安全性の観点から、13C-標識化合物を用いた13C-呼気試験法に着目し、患者個々の動態変動を評価する方法として13C-リドカイン呼気試験の検討を行っている。本研究は、CYP3A代謝変動評価系として開発中である13C-リドカイン呼気試験についてさらに発展・応用させるとともに、CYP3Aに加えて、in vivoにおけるP-糖タンパク質(P-gp)活性変動を13C-リドカイン経口投与後の呼気中13CO2変動により迅速簡便に評価する新規in vivo評価系の構築を試みている。 現在までに、13C-リドカイン呼気試験を用いてCYP3A代謝活性を評価できることが示されたが、従来行われているミダゾラム動態試験法によるCYP3A活性評価との詳細な定量的相関性は不明であった。そこで複数の活性変動条件において13C-リドカイン経口呼気試験およびミダゾラム動態試験を実施し、投与初期の呼気反応パラメータが従来法に相関することが示された。 また、13C-リドカイン呼気試験のin vivo P-gp活性変動評価系への応用を検討する目的で、P-gp誘導条件およびP-gp特異的阻害剤併用条件について検討を実施した。その結果、デキサメタゾンで前処置したマウスにおいて、P-gp阻害剤により13C-リドカイン経口投与後の呼気反応の上昇が認められた。一定の条件下において、13C-リドカイン呼気試験により小腸P-gpの活性変動を評価できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CYP3A代謝変動評価系として開発中である13C-リドカイン呼気試験と従来行われているミダゾラム動態試験法によるCYP3A活性評価とのより詳細な定量的相関性について引き続き検討を行った。CYP3A阻害剤であるフルコナゾールを用いて薬物代謝活性を中程度に変動させたモデル動物(マウス)を作成し、13C-リドカイン経口呼気試験およびミダゾラム動態試験を実施した。複数の阻害条件における各種呼気反応パラメータとミダゾラム動態パラメータの相関性について検討した結果、投与初期の呼気反応パラメータが従来法とよく相関することが示された。 さらに、13C-リドカイン呼気試験をP-gp変動評価系として発展させることを目的とし、P-gp発現を誘導させたマウスを用いた検討を開始した。まず、13C-リドカイン呼気試験の呼気反応にP-gp活性変動の影響がみられる実験条件(P-gp誘導モデルマウスの作成条件およびP-gp特異的阻害剤併用条件)を複数検討した。その結果、P-gp阻害剤により13C-リドカイン経口投与後の呼気反応に上昇が認められる実験条件を見出した。現在、同条件におけるP-gp発現誘導の程度について確認を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、13C-リドカイン呼気試験を用いたP-gp活性変動評価系に関する検討を継続する。前年度に見出した実験条件下、P-gp誘導モデルマウスにおける13C-リドカイン経口呼気試験の呼気反応変動を検討するとともに、そのP-gp発現誘導の程度について基質薬物を用いた動態試験により確認を行う。 13C-リドカイン経口呼気試験を用いた小腸におけるP-gp活性評価系が確立できれば、新たなP-gp阻害作用を有する薬物・食品候補についてスクリーニングを行い、本評価系の有用性を検討する。 さらに、それまでに得られた呼気反応データおよび各種動態データを用いて、呼気中13CO2変動から薬物動態変動を評価するP-gpを組み込んだ生理学的薬物動態モデル(PBPKモデル)を再構築し解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、最終年度に予定している生理学的薬物動態モデル(PBPKモデル)による解析のため、解析を実施するハイスペックPCの購入を予定していた。予定していた海外の解析プログラムのライセンス入手が困難となったことから、新たな解析プログラムの検討が必要となった。解析プログラムによって必要となるプラットフォームが異なることから、解析プログラム選定後にPCを購入する必要がある。新たなプログラム選定に時間を要していることから、令和5年度に解析プログラム決定次第PCを購入することに変更した。
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