研究課題/領域番号 |
21K06679
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
伊藤 由佳子 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (30278444)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膵癌 / 血中循環腫瘍細胞 / PK-PD / バイオマーカー / リキッドバイオプシー / circulating tumor cell |
研究実績の概要 |
近年、膵癌患者に対する化学療法レジメンの普及が功を奏し、米国では5%程度であった5年生存率が約10年で10%(2020年1月)に到達したものの、化学療法施行時には、①重篤な副作用出現、②薬剤耐性による無奏功、③転移の発見、によって化学療法レジメンの中断・中止・切替により予後不良へ転向することが懸念され、その対策が望まれている。一方、リキッドバイオプシーによる非侵襲的生検方法を利用して、血中循環腫瘍細胞(CTC)を癌の進展の予測マーカーとして化学療法施行時の有益な情報の活用方法が未だ未確立であることから、本課題では、CTCを活用した膵癌化学療法の有効性・安全性を担保し得る高精度治療マネジメントプラットフォームの構築を試み、膵癌患者の予後改善を目指して検討を行っている。今年度は、膵癌モデルマウスに対する長期治療を試みて、定期的にCTCを計測することによって、癌の進展との関連性について検討したところ、CTCの変化と治療のタイミングとの間に傾向を認める結果が得られた。同時に、抗がん剤濃度についても測定することによってCTCとの関連性を検討している。治療期間を大きく初期、中期、後期の3期に分けて、CTCの変動と腫瘍縮小、薬剤濃度を検出することを予定している。将来的には、膵癌化学療法時のリキッドバイオプシーによるCTCと抗がん剤濃度から癌の進展・腫瘍縮小効果・副作用発現予測のための薬物動態学的/薬力学・毒性薬理学的モデルによるプレシジョン医療実現への展開を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵癌化学療法施行時のCTCの時間的推移を検討するため、ヒト膵癌由来SUIT-2細胞によるxenograftマウスモデルを作製した後、FOLFIRINOX治療群と無処置群とに分けて、治療初期、中期、後期において検討する計画で進めている。しかしながら、治療初期におけるデータを採取したところで昨年度が終了したため、今年度は、後半部分のデータを採取予定である。やや遅れている理由としては、治療後のリキッドバイオプシーのタイミングを検討しており、治療翌日、2日後、3日後、4日後に数日内においても変動が認められた。すなわち、治療2日目まではCTCが高値を示すが3日および4日目には低下することが示された。治療回ごとに同様の変化が認められたことから、長期治療時のCTC数の計測タイミングを検討する必要があることが示唆された。これらの検討の必要性が生じたため、当初の計画からはやや遅れている状況に至っている。長期間の治療を通じてCTC数の動きを検出することを目下進めている。現段階では治療初期におけるデータ採取について終盤にあるが、その後、治療中期以降におけるCTC数の変動を明らかとすることで、バイオマーカーとしての活用方法の確立につながる解析が可能と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
膵癌化学療法の予後改善を目指すべく、リキッドバイオプシーによる癌の進行・転移を検出して、化学療法へとフィードバックさせて効果的な用量調節につながることを目的として長期間の化学療法時のCTC数の変化について検討した後、治療効果と治療指針へとつながる情報として活用するための方法をPK/PD解析を用いて客観的評価と仮想治療実験をシミュレーションすることにより、検証するとともに、その妥当性の確認のために、共同研究者である岡山大学堀口医師のご指導の下、臨床検体での測定とデータ解析を実施することを目指す。最終的には、膵癌化学療法の個別化と予後改善のための方法論の構築が目標である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬の在庫が存在していたため、購入額が予定額よりも下回ったが、長期治療実験において使用する予定である。
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