研究課題/領域番号 |
21K06680
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
清水 かほり 大阪大谷大学, 薬学部, 講師 (50737749)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リゾリン脂質 / リン脂質 / 糖尿病 / 遺伝子治療 / アデノウイルスベクター / 生活習慣病 / 肝臓 / インスリン |
研究実績の概要 |
本研究では、研究代表者らが開発した肝障害性が低く、長期に渡って目的遺伝子を発現可能な改良型アデノウイルス(adenovirus; Ad)ベクターを用いて、マウスの肝臓においてリゾリン脂質の発現に関与する遺伝子を高発現または発現抑制させることで、糖尿病に対する治療効果を検証した。 研究代表者が着目したリゾリン脂質の発現を制御する遺伝子Aを搭載したAdベクターをマウスに投与し、糖負荷試験を行い、血糖値およびインスリン分泌量を測定した。その結果、リゾリン脂質の発現を制御する遺伝子Aを搭載したAdベクター群は、コントロール群と比較して、食後のインスリン分泌が増加することで食後高血糖を抑制することが示された。 また、研究代表者が着目したリゾリン脂質の発現を制御する遺伝子Bを抑制可能なAdベクターをC57BL/6マウスに投与し、高脂肪食を摂取させたところ、コントロール群よりも血中トリグリセリド値が低値を示した。肝臓を摘出し、ヘマトキシリン・エオジン染色およびオイルレッドO染色を行ったところ、リゾリン脂質の発現を制御する遺伝子Bを抑制可能なAdベクターでは、コントロール群よりも肝臓における脂肪蓄積が抑制されていた。さらに、新たにリゾリン脂質の発現を制御する遺伝子等を搭載したAdベクターを2種類作製することに成功した。 本研究成果より、上述のリゾリン脂質の発現を制御する遺伝子A、Bの肝臓内の発現を制御することは、2型糖尿病や非アルコール性脂肪性肝疾患などの生活習慣病の治療・予防に有用であることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)研究代表者が着目したリゾリン脂質の発現を制御する遺伝子Aが、食後のインスリン分泌を増加させることで食後高血糖を抑制することが示された。すなわち、肝臓におけるリン脂質・リゾリン脂質の変化が、膵臓からのインスリン分泌に影響を及ぼすことを見出した。 (2)研究代表者が着目したリゾリン脂質の発現を制御する遺伝子Bの発現を抑制することで、血中トリグリセリド値および肝臓内の脂肪蓄積を抑制することを見出した。 (3)新たに、リゾリン脂質の発現を制御する遺伝子等を搭載したアデノウイルスベクターの作製に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)食後のインスリン分泌を増加に寄与する「リゾリン脂質の発現を制御する遺伝子A」については、肝臓におけるリン脂質・リゾリン脂質の変化が、膵臓からのインスリン分泌に影響を及ぼすメカニズムについて検討する。 (2)肝臓内の脂肪蓄積に関与する「リゾリン脂質の発現を制御する遺伝子B」については、肝臓内のリン脂質・リゾリン脂質の変化について解析する。また、糖・インスリン負荷試験を行い、耐糖能およびインスリン抵抗性が改善されるかなどを調べる。 (3)新たに作製したリゾリン脂質の発現を制御する遺伝子等を搭載したアデノウイルスベクターをマウスに投与し、2型糖尿病に対する治療効果およびそのメカニズムを詳細に検討する。具体的には、体重測定、耐糖能試験、生化学検査(血糖値、血中トリグリセリド値など)、内分泌学的検査(インスリン値など)等を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:研究の遂行に必要な試薬を、通常よりも安価で購入できる期間に購入できたため、次年度使用額が生じた。 使用計画:次年度に必要となる試薬購入費として、適切に使用する。
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