研究課題/領域番号 |
21K06687
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田口 雅登 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (20324056)
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研究分担者 |
市田 蕗子 国際医療福祉大学, 臨床医学研究センター, 特任教授 (30223100)
廣野 恵一 富山大学, 学術研究部医学系, 講師 (80456384)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 薬物間相互作用 / pregnane X 受容体 / ワルファリン |
研究実績の概要 |
薬物治療の最適化(個別化)を推進するには、薬物動態特性と個体間変動機構の解明が必須である。小児期の身体発達は、薬物体内動態に複雑な影響を与えるが、その実態を明らかにするための臨床データの解析手法は確立されていない。本研究では長期時系列データの集積・活用によって小児発達モデルの記述精度の改善を図り、被検薬物の体内動態変動因子(共変量)を高感度検出可能とする新たな薬物動態解析法を開発する。また、先天性心疾患を有する患児は、右心不全を合併する場合が比較的多い。申請者は右心不全時に合併する門脈うっ滞が腸管の浮腫(むくみ)を誘発し、薬物吸収を低下させる現象(仮説)と分子病態学的機序の解明を図る。 初年度の研究成果は、長期時系列データ解析に基づく薬物動態試験のうち、マシテンタンの体内動態に及ぼす小児の発達変動と併用薬の影響評価である。すなわち、小児におけるマシテンタンと活性代謝物の血漿中濃度にはそれぞれ最大13.2倍、9.7倍の個体差が観察された。マシテンタンのクリアランス(CL/F)の共変量の一つである発達変動の記述にはアロメトリー式が有用であることが明らかとなった。さらに、ボセンタン投与歴の有無によってCL/Fが異なるか否かを長期追跡によって評価したが、予想に反して明らかなCL/Fの変動は認められなかった(論文未発表)。また、このようなボセンタンからマシテンタンへの変更を行うと、核内受容体であるPXRを介した相互作用がオンからオフに切り替わるため、抗凝固薬ワルファリンの作用が回復すると予想されたが、実際にはマシテンタンでも薬物代謝酵素の誘導作用は遷延する事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
右心不全モデル動物を用いた実験において、気化麻酔を導入したことによって、安定した動物実験の成績を得ることが出来るようになった。モノクロタリン誘発肺高血圧症モデルラットでは、高度な外科的手技を必要とせず、右心不全を合併することから、門脈系のうっ滞が腸管の薬物吸収を変動させる現象をポリエチレングリコールの腸管膜透過性を指標に再現することができた。
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今後の研究の推進方策 |
先天性心疾患患児において予想される薬物動態の共変量(とくに右心不全)とその裏づけとなる根拠情報を得るための基礎実験を行い、研究計画を推進させる。 近年申請者は、肺高血圧症患児におけるマシテンタンのCL/F値が右心不全時に約1.4倍上昇する現象を見出した(論文投稿中)。その機序は腸管浮腫による薬物吸収率(F)低下と推察されるが、成人の虚血性心不全(左心不全)ではCL/Fが低下するなど、申請者らが得た知見の頑健性と一般性の検証が今後の課題である。そこで門脈系のうっ滞が腸管の薬物吸収を低下させる現象を右心不全モデル動物で再現するとともに、分子病態学的機序を解明する。さらに種々の薬物特性に依存した右心不全時の体内動態変動パターンの法則(予測)を明らかにし、薬物治療における個別化支援ツールの開発につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が使用しなかったため。次年度以降に使用し、今後も当初の計画通 り研究を進める。
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