研究課題/領域番号 |
21K06697
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
喜里山 暁子 同志社女子大学, 薬学部, 准教授 (00234401)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ドネペジル / アセチルコリン / ラット / PK/PD解析 / マイクロダイアリシス |
研究実績の概要 |
研究の第一段階である「ドネペジル単独投与時のPK/PDモデルの構築」を目的に、まずドネペジルを単独で静脈内投与後の体内動態(PK)、および薬力学的な効果(PD)の指標としての、脳海馬内のアセチルコチン(ACh)濃度の推移について検討した。ドネペジルの投与量は1.25、2.5および5.0 mg/kgに設定し、Wistar系雄性ラットを用いて検討した。投与実験2日前に脳海馬内に透析プローブ挿入のためのガイドカニューレの固定を行った。投与実験では、脳海馬内のガイドカニューレに透析プローブをセット後1.5 uL/minの流速で人工脳脊髄液(aCSF)を流し、経時的にaCSFを分取しaCSF中のAChの濃度推移について検討した。1時間薬物投与前のaCSFを回収した後、ドネペジルを大腿静脈より0.5 mL/30 minの速度で上記投与量にて点滴投与し、経時的に採血およびaCSFの分取を行い、血漿中のドネペジルの体内動態および効果を検討した。 ドネペジルの体内動態は点滴投与開始後30 minに最高血漿中濃度(Cmax)に到達し、その値はほぼ投与量に比例した。その後半減期(t1/2)約110~150 minで血漿中より消失した。投与量の増加とともにドネペジルのt1/2および平均滞留時間(MRT)は延長傾向、全身クリアランス(CLtot)は低下傾向であった。また脳海馬内のACh量の推移は、投与量が1.25 mg/kgではほとんど変化が認められなかったものの、2.5 mg/kgでは投与後30 min付近で高値となり、120 min頃に投与開始前の量に戻った。なお、5.0 mg/kgの投与量では、投与開始30 min頃に死亡するラットが続いたため一旦中止した。現在、生理学的モデル構築のためのドネペジルの臓器移行性を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題採択前より、予備実験にてドネペジル血漿中濃度の定量法、aCSF中のACh濃度測定法について検討を行い、確立していたことから、体内動態の検討についてはスムーズに研究を進めることができた。ただし、効果については海馬内のAChエステラーゼ活性の測定も検討したが、現時点で活性を正確に測定できる基盤が整わず、ACh濃度の測定で評価している。aCSF中のACh濃度推移の評価については、ラット脳海馬内へのプローブの挿入とその後のマイクロダイアリシスにおいて細かい実験操作が必要で、データにばらつきが多かったことからその改善のために時間を要した。現在、得られたデータをもとに、PKモデルとして従来のコンパートメントモデルを用いてPK/PD解析、および生理学的モデル構築のためのドネペジルの臓器移行性の検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
投与量については、1.25 mg/kgでは明らかな効果が認められず、一方5.0 mg/kgでは副作用が現れた。従って今後シロスタゾールとの併用時における検討で、ドネペジルの体内動態や効果・副作用にどのようにシロスタゾールが影響を及ぼすか、検討条件や評価について考慮していく必要が出てきた。同様に、高投与量時に起こるラットの死亡の原因(副作用)について、心電図などを用いて確認・定量的な評価方法を検討していき、併用投与時の副作用評価につなげていきたい。今後はシロスタゾール併用投与時のドネペジルの体内動態変動、効果としての脳海馬内のACh量の推移および臓器移行性の変化について引き続き検討し、シロスタゾールの体内動態を考慮した併用投与時のPK/PDモデルの構築を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
発表予定の学会と研究の進捗状況が合わず先送りしたため、旅費の支出がなくなった。 当初予定より消耗品の支出が増加したため、PK解析ソフト(Phoenix Winnonlin)レンタルライセンス料を別の研究費より支出したため。
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