研究課題/領域番号 |
21K06698
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
川瀬 篤史 近畿大学, 薬学部, 准教授 (80411578)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トランスポーター |
研究実績の概要 |
トランスポーター機能を調整する可能性のある競合ペプチドの設計を行った。排出トランスポーターの蛍光基質を用いた検討では,MRP-EBP50間の競合ペプチドを用いることでMRP活性を低下させることが確認された。また,競合ペプチドを用いることで,トランスポーターと裏打ちタンパク質の複合体量を低下させる可能性が示唆された。EBP50内の3つのサイトに関する検討では,PDZ1, PDZ2, EBドメインのうち,PDZ1に対する競合ペプチドで特にトランスポーター阻害作用が確認された。今回設計したPDZ2やEBドメインに対する競合ペプチドでは少なくともMRP2やP-gp活性に対して阻害作用は認められないことが明らかになった。これらの作用はMRP2とP-糖タンパク質に対しては認められたものの,次に翌年以降に検討予定である抗がん薬の細胞内蓄積量および細胞増殖抑制作用の検討を行ううえで必要となると考えられるトランスポーター活性阻害作用を定量的に評価するためのLC-MS/MS法の条件設定を行った。最終的には抗がん薬を用いたLC-MS/MS条件を設定する必要があるが,細胞内の薬物濃度の定量を精度よく行うためにNSAIDsなど複数の薬物を使用することでLC-MS/MS法による定量を確立し,これにより次年度以降の抗がん薬の測定についても問題なく進めることが可能となった。さらに,ペプチド添加量,ペプチド処理時間,作用持続時間,細胞傷害性およびペプチド安定性についても併せて評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたペプチドの設計を行い,それらのトランスポーター活性に対する阻害作用について評価するとともに,トランスポーターと複合体生成量の測定を行い設計したペプチドがMRP2とP-gpに対して効果があることを明らかにした。また,今後必要となるLC-MS/MSを用いた細胞内薬物濃度の定量についての準備を行うことが完了したため,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
標的プロテオミクス法を用いて,トランスポーターと裏打ちタンパク質間の相互作用に対する競合ペプチドの影響を評価するとともに,抗がん薬の細胞内蓄積量,細胞増殖および細胞生存率に対する競合ペプチドの影響について評価していく予定である。これまでの検討よりMRP2とradixinの相互作用に対して阻害作用を示したペプチドを用い,競合ペプチド処理した細胞から抽出したタンパク質を免疫沈降した後に標的プロテオミクス法により,同一サンプル内で一斉かつ迅速にタンパク質間相互作用量を測定することを予定している。抗がん薬の細胞内蓄積量はこれまでに確立したLC-MS/MS法,細胞傷害性についてはMTT法,LDH漏出量の測定および細胞内ATP含量を指標とする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
設計したペプチドの一部の注文を次年度に行うため,次年度使用額が生じ,それに伴う細胞培養関連の消耗品についても次年度購入する必要があるため,次年度使用額が生じた。
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