研究課題/領域番号 |
21K06700
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
坂根 稔康 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (50215638)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オキシトシン / 自閉症 / 鼻腔内投与 / 脳内送達 |
研究実績の概要 |
本研究は、鼻腔内投与によるoxytocinの脳内直接送達に基いて、自閉症スペクトラム障害に対するより有効な治療法を開発することを目的とする。そのためには、鼻腔内投与による脳内送達効率と薬物物性との関係を検討し、その情報に基づいた製剤設計が重要である。2021年度は、膜透過性が良好な antipyrine (ANP)、膜透過性が乏しい ranitidine (RAN)をモデル薬物として選択し、鼻腔内投与後の脳移行性を比較するとともに、鼻腔から脳内に移行した後の薬物の脳内動態をmicrodialysis法 (MD法) により評価した。 まず、両薬物をマウスの鼻腔内または腹腔内に投与し、血漿中濃度と脳内各部位(嗅球・脳前半部・脳後半部)における濃度の経時変化を測定・比較した。鼻腔内投与後のANPの血漿中濃度と脳内濃度は、腹腔内投与後と比較して低かった。一方、RANを鼻腔内投与した場合、腹腔内投与と比較して、血漿中濃度は低かったが、対照的に脳内濃度は高く、嗅球が最も高い値を示した。したがって、ANP等の膜透過性が高い薬物と比較して、RAN等の膜透過性が低い薬物は、鼻腔内投与後の脳内移行に対して、鼻腔からの直接移行の寄与が大きいことが明らかとなった。 次に、脳内に移行した後の脳内薬物動態を検討した。ラットの嗅球、大脳にMDプローブを埋設し、嗅球埋設プローブに薬液を注入することで、嗅球に薬物を投与した。同時に、大脳埋設プローブより薬物を回収し、大脳細胞外液の薬物濃度の経時変化を測定した。膜透過性の低い薬物の脳内の移動は比較的迅速であったが、膜透過性が良好な薬物は細胞内への取込みと排出を繰り返しながら、緩慢に脳内を移動する可能性が示唆された。 以上の知見より、薬物の物性によって、鼻腔から脳への移行性と移行後の脳内動態が異なる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究に必要な消耗品の海外での生産がコロナ禍により停滞し、その結果、納入に予想以上の時間がかかったため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度と比較して、2022年度はコロナ禍の悪影響がかなり軽減されると期待している。本研究を優先的に実施し、遅れを取り戻す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた学会がweb開催に変更となり、当初、計上していた旅費(10万円)を拠出することができなかった。また、納期の遅延により、一部の消耗品が年度内に納入されなかった。 未納入の消耗品に関しては、2022年度早々に納入される予定であり、経費の使用に問題はない。また、世界的な資源の高騰で、2022年度は研究に必要な消耗品の値上がりが予想される。残金の一部は、値上がりで相殺される可能性があると考えている。
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