研究課題/領域番号 |
21K06701
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
渡邊 政博 就実大学, 薬学部, 講師 (10758246)
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研究分担者 |
豊村 隆男 就実大学, 薬学部, 講師 (40425137)
森 秀治 就実大学, 薬学部, 教授 (50220009)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | DAMPs / 炎症 / 相互作用 |
研究実績の概要 |
近年,内在性起炎分子であることが示された終末糖化産物(AGEs)とダメージ関連分子パターン(DAMPs)は,メタボリックシンドロームの基盤とされる慢性炎症や,感染症に伴う炎症の増悪化などの,既知のメカニズムでは説明が困難な炎症病態の要因として注目されている.過去に我々は,AGEsの作用メカニズムの探索を進めるなかで,新規AGEs結合分子AGE-BPを見出した.この分子はDAMPsに特有の挙動を示すものの,既知のDAMPsによる炎症反応を抑制する作用をもつことが示された.この結果より我々は,AGE-BPがDAMPsと対となって炎症反応を制御する炎症抑制性DAMPsである可能性を見出した.そこで本研究では,AGE-BPが炎症抑制性DAMPsとして機能するメカニズムと,炎症病態下における既知のDAMPsやAGEsとの関係の解明を目指す. 本年度は,分子・細胞レベルにおけるAGE-BPの作用メカニズムの解析のために,AGE-BPの昆虫細胞発現系の改良と,発現系により調製されたリコンビナント分子を用いたサーマルシフトアッセイを実施した.これらの検討により,以降の分子・細胞レベルにおける解析に用いるリコンビナント分子のより容易な調製法を構築することができた.また,分子に付加するタグ配列を変更することにより,これまで困難であったプルダウンアッセイを実施できる可能性が見出された.また,個体レベルにおける解析のために,予備的にLPS投与による敗血症病態モデルマウスを構築し,その性状を検討した.さらに,分子・細胞レベルと個体レベルの双方で利用することになる,抗AGE-BPモノクローナル抗体の調製に着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昆虫細胞発現系については,タグ配列の変更や発現効率を高めるための検討を行い,これまでの標準的な発現系よりも多くのリコンビナント分子を得る手法と,マグネットビーズを用いたプルダウンアッセイに適用可能な分子を得ることに成功した.これらにより,AGE-BPを中心とした関連分子の相互作用解析や,細胞への作用の検討をさらに推進することが可能となる.さらに,炎症性疾患モデル動物を予備的に構築することに成功し,このモデルにおいてDAMPsとAGE-BPの動態が変化していることを見出した.さらに,ラットを用いたモノクローナル抗体の作製に着手し,抗AGE-BP抗体を産生するハイブリドーマを得ることに成功した.これらのことから,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
分子・細胞レベルにおける解析については,サーマルシフトアッセイに加えてプルダウンアッセイを実施することができるようになったため,AGE-BPを中心としてAGEsを含む関連分子との相互作用を検討していく.さらに,AGE-BP分子自体の性状を解析し,類似した分子についてもリコンビナント体の作製を試み,細胞への作用や相互作用の相違を検討する.また,モノクローナル抗体については少量の粗精製品を得ることができているため,これを用いて相互作用への影響や細胞への作用の変化を検討する.さらに将来的には,ある程度高濃度の抗体が必要となってくるため,ハイブリドーマの高密度培養が可能な系の構築を検討していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はおおむね予定通りに解析を進められたものの,新型コロナウイルス感染症の拡大による需要の急激な増加や一部の試薬・機器等の長期欠品,物流の混乱等の影響により,購入予定であった物品の購入ができない事態が複数発生した.具体的には,ハイブリドーマの高密度培養に必要となる機器の納期が見通せない状態となっている.また,RNA精製キットについても納期が大幅遅延している.フィルターチップやディスポピペット等についても同様の状態が長期的に継続していた.これらの購入できなかった物品に加えて,試薬・機器等の購入にあたってキャンペーン等を活用したことにより次年度使用額が生じた.購入が困難な物品については,代替品等の検討を進めるとともに購入が可能となる時期を見極めて実験計画の組換えを行い,研究目標を達成できるように解析を進めていく予定である.
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