近年,内在性起炎分子であることが示された終末糖化産物(AGEs)とダメージ関連分子パターン(DAMPs)は,既知のメカニズムでは説明が困難な炎症病態の要因として注目されている.過去に我々は,新規AGEs結合分子AGE-BPを見出した.この分子はDAMPsに特有の挙動を示すものの,既知のDAMPsによる炎症反応を抑制する作用をもつことが示された.この結果より我々は,AGE-BPがDAMPsと対となって炎症反応を制御する炎症抑制性DAMPsである可能性を見出した.そこで本研究では,AGE-BPが炎症抑制性DAMPsとして機能するメカニズムと,炎症病態下における既知のDAMPsやAGEsとの関係の解明を試みた. 分子・細胞レベルにおけるAGE-BPの作用メカニズムの解析のために,AGE-BPの昆虫細胞発現系の改良を実施した.この手法を用いてAGE-BPが属するファミリー分子のリコンビナント体を調製し,AGE-BPとの作用の比較を試みた.AGE-BPファミリー分子は,AGE-BPと同様の作用をもつことが示された.一方で,別のファミリー分子は,抑制作用をもたないことが示された.さらに,これらの分子のアミノ酸配列を比較し,LPSの作用メカニズムに関わる過去の知見と比較することにより,AGE-BPによる炎症抑制作用のメカニズムを推定することに成功した.また,AGE-BPによる炎症抑制作用は,AGEsの共存によって阻害されることを見出した.この阻害作用にはAGE-BPとAGEs間の相互作用が部分的に関与している可能性が考えられた. また,個体レベルにおける解析のために,敗血症病態モデルマウスの検討を行い,AGE-BPの解析に適したモデルを選定した. また,分子・細胞レベルと個体レベルの双方で利用することができる,抗AGE-BPモノクローナル抗体を複数クローン取得することに成功した.
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