研究課題
・ボルテゾミブ(Bortezomib、BTZ)は多発性骨髄腫治療において中心的な役割を担う医薬品であるが、致死的な肺障害を誘発することがある。しかし、その対処法や治療指針は未だ定まっておらず、BTZ誘発性肺障害の発症機序の解明が急務である。申請者は以前、BTZは血管内皮細胞に直接作用して血管透過性を亢進することを見出した。そこで「BTZによる血管透過性亢進が起点となり、肺胞間質への血漿タンパク質の漏出や炎症細胞の浸潤が生じ、炎症を惹起した結果、肺障害が発現するのではないか?」と着想した。本研究課題では、ヒトヒト肺微小血管内皮細胞(HPMEC)を対象としたin vitro実験系と、BTZ誘発性肺障害モデルマウスを用いたin vivo実験系により、肺胞毛細血管の透過性亢進を契機とした炎症発現メカニズムの解明に取り組んだ。・ヒト肺微小血管内皮細胞(HPMEC)を対象としたin vitro実験系により、BTZはClaudin-5やOccludin、VE-cadherinといった血管内皮細胞間の接着を制御する分子の発現を減少させることにより、血管透過性を亢進することが明らかになった。・BTZ誘発性肺障害モデルマウスを用いたin vivo実験系により、肺胞の間質が肥厚し、肺胞径が縮小していたことから、間質性肺炎のような拘束性肺障害に類似した病理像と考えられた。一方で、BTZ投与開始から4週間後では、1週間後とは対照的に、肺胞壁が薄くなり、肺胞径が拡張する傾向が見られたことから、閉塞性肺障害に類似した病理像と考えられた。・これらの結果から、BTZによる肺障害は、病態が経時的に変化し、BTZ投与初期には肺胞間質の炎症と伴う間質性肺疾患が起こり、その後、肺実質の破壊を伴う閉塞性肺疾患が出現すると考えられた。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件)
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