研究課題
本研究計画最終年度においては、レトロインバーソ型ブラジキニン(RIBK)に関する検討を行った。RIBKはブラジキニン(BK)の60%程度の活性になっているものの、マウス血漿中で安定に存在しており、血漿中インキュベーション後にブラジキニン(BK)の活性は消失したのに対し、RIBKはHPLC解析においても分解が認められず、また活性の低下も認められなかった。また有害作用の検討として細胞傷害性および血圧への影響を検討したところ、BKまたRIBKとも明確な細胞傷害性はみられなかった。一方、BKの投与直後にみられる血圧低下がRIBKではみられず、活性の面では劣るもののRIBKはBKよりも安全性が高いと考えられた。またHPMAポリマーへの結合により、pH応答的なRIBKの放出がみられ、ヒドラゾン結合に隣接する置換基に応じて安定性および放出速度の調節が可能であった。期間全体においては、pH応答性の調節が可能なHPMAポリマー結合型ブラジキニン(CS-BK)を調整し、BK様活性、血漿中安定性、pH応答的放出を検討し、担がんモデルマウスにおける高分子抗がん剤の腫瘍集積性への影響を検討した。pH応答性の調節はHPMAポリマーとBKとの連結に用いているヒドラゾン結合の隣接基を変えることでCS-BKのpH応答性を大きく変化させることが可能であった。ポリマー結合体であるCS-BKは血漿中安定性が高くBK様活性は低かったが、酸性環境に応答してBKを放出することによりBK様活性の回復が認められた。CS-BKの投与により腫瘍への流入血液量が増大し、高分子薬剤の腫瘍集積性ならびに抗腫瘍効果の増大がみられた。これらの効果はpH応答性の高いCS-BKにおいて顕著に認められた。これらの研究成果は、ブラジキニンを基盤とした抗がん剤の腫瘍集積増強剤の開発に貢献しうるものと考えている。
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Nanomedicine: Nanotechnology, Biology and Medicine
巻: 57 ページ: 102744~102744
10.1016/j.nano.2024.102744