血小板は、活性化に伴い凝集すると共に様々な生理活性物質を放出し、止血のみならず生体内で多彩な作用を示す。血小板とがん細胞との相互作用に関しては古くから知られているが、血小板由来の物質ががん細胞のトランスポーターの輸送活性を変動させるかについてはほとんど検討されていない。 これまでの検討により、ラット血小板を活性化させた際の上清でヒト肝がん由来HuH-7細胞を刺激した結果、中性アミノ酸トランスポーターの1つであるシステムAのサブタイプSNAT4の輸送活性が増大する結果が得られた。そこで、血小板上清の濃度を振ってSNAT4の輸送活性変動を確認したところ、興味深いことにSNAT4の輸送活性は濃度を上げるにしたがって減弱し、さらに高濃度にした場合は増大するという二相性の活性を示した。生体内での血小板数を考慮した濃度における作用は輸送活性減弱であったため、この活性減弱についてアミノ酸の輸送パラメーターの変動を検討したところ、Km値が増加する一方Vmax値はほとんど変化せず、SNAT4の基質に対する親和性が減少することで輸送活性が減弱している可能性が示された。定量的PCRの結果からもSNAT4の発現量はほとんど変化していないことが裏付けられた。また、有機カチオントランスポーターOCTN2において同様の検討をした結果から、活性化血小板上清による輸送活性変動はSNAT4に特異的であることが示された。 血小板は、内包する生理活性物質を放出することで他の細胞に作用する間接的な作用だけでなく、種々の細胞と結合して作用する直接的な作用が知られている。そこで、ラットから調製した血小板懸濁液でHuH-7細胞を刺激したが、SNAT4の輸送活性変動はほとんど認められなかった。 以上の結果より、血小板は生理活性物質を放出することでHuH-7細胞におけるSNAT4の輸送活性を変動させることが明らかとなった。
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