研究課題
治療標的遺伝子の変異や患者特性に応じて多様ながん薬物療法が実施されるため、各抗がん薬の血中濃度を効率的に測定するには、複数の抗がん薬を同一の方法で簡便かつ迅速に分析可能な定量法が有用となる。レンバチニブをはじめ、経口分子標的抗がん薬は在宅で服用することが多く、最適なタイミングで採血し、治療薬物モニタリングを実施することが難しい。そこで、全血23 μLから遠心分離操作によって血漿5.6 μLを容易に分取可能なマイクロサンプリングデバイスMicrosampling Wing (MSW) を用いたヒト血漿中レンバチニブ濃度定量法の開発した。肝細胞がん患者から得られた静脈血を用いて、MSW法と従来法(plasma法)による血漿中レンバチニブ濃度を比較した結果、同程度の定量精度を持つことが示されたことから、在宅患者におけるレンバチニブの治療薬物モニタリングに適用可能であると考えられた。また、破壊性甲状腺炎を発現した肝細胞がんの2例について、血中レンバチニブ濃度との関連性を検討した。2例の血中レンバチニブ濃度は有効血中濃度域を大きく超えており、甲状腺機能亢進症との関連性が示唆された。そのため、レンバチニブの治療薬物モニタリングは、破壊性甲状腺炎のリスク最小化に貢献する可能性があると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
分子標的抗がん薬の簡便かつ迅速な血中濃度一斉測定法の構築とPharmacokinetics(PK)解析は、計画通りに進行している。2023年度は、NONMEM(ICON public limited company)を用いたM&Sを重点的に進捗させる。
がん種や遺伝子変異毎に抗腫瘍効果や有害事象と相関する分子標的抗がん薬のPKパラメータを精査し、「有効血中濃度域」を解明する。また、NONMEM(ICON public limited company)を用いたM&Sで、小児などのスペシャルポピュレーションも含めて、患者背景に基づく分子標的抗がん薬の「最適な用法・用量」を解明する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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