研究課題/領域番号 |
21K06709
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
山本 康次郎 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70174787)
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研究分担者 |
荒木 拓也 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00568248)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 血小板 / 抗血小板薬 / Talin |
研究実績の概要 |
本研究では、血小板凝集能を変化させた多血小板血漿をADP刺激した後のプロテオーム解析を行い、血小板凝集能を定量的に反映するタンパク質を探索する。保存検体でも安定に存在する指標タンパクを見出すことにより、臨床現場において血小板凝集能を容易に評価できるようになる。また、抗血小板薬の薬動力学解析が可能になり、合理的な薬物投与設計が可能になる。 血小板凝集カスケードの最下流では、CalpainによってTalinが切断され、生成したTalin-HeadがIntegrinαⅡbβ3に結合し、IntegrinαⅡbβ3の活性化が起こる。したがって、Talin-Headの生成量を分析することで、血小板凝集能を評価できる。 まず、健常人から得た新鮮血液を用いて、遠心分離によりPRPを調製し、ADP添加により血小板を活性化した直後に還元アルキル化処理し、トリプシンで蛋白質を断片化し、Talin-Headに特異的なアミノ酸配列を検出できるLC-TOF MS条件を検討した。STVLQQQYNRに相当するMSシグナルを特異的なアミノ酸配列として選択できた。そして、合成ペプチドを用いてMSによる測定の条件を検討したところ、必要な濃度範囲で直線性が得られ、測定可能であることがわかった。また、その測定結果はウエスタンブロッティングによる測定と矛盾せず、ヒト検体を用いた検討が可能であることが示された。 薬物による影響を検討するには動物実験が適当であり、ラットにおけるTalin特異的配列を同定した。測定条件の検討をほぼ完了し、ヒトと同様の手法で測定可能となる見込みである。現時点で特に問題は生じていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年までに、標的タンパクであるヒトTalinをトリプシン処理して得られるペプチド断片のうち、Talinに特有の配列でMS検出可能なペプチドを探索し、STVLQQQYNR、および他の3つのペプチド配列を決定した。STVLQQQYNRのMSによる測定条件を確立し、測定結果はウエスタンブロッティングによる結果と矛盾せず、濃厚血小板液をADP刺激した後の試料の測定も可能である。薬物による影響を検討するため、ヒトに先立って動物実験を行う必要があり、ラットTalinについても同様の検討を行った。ラットTalinに特有の配列を決定し、測定条件を確立することができていることから、本研究の最終目標である薬効指標の確立および薬動力学解析への準備が整ったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終目標はヒト試料を用い、実際に臨床で行われている血小板凝集能測定値を反映し、かつ保存検体で測定できる指標を見出し、血小板凝集阻害薬の効果を評価することである。しかしながら、ヒトで薬効測定を行うことは制約が大きいため、当面は動物実験により測定の妥当性を検討することとした。種を変更したため測定対象ペプチドの選定や測定条件の確立を再度行った。動物実験に変更することにより、薬物による影響の検討が容易となり、最終目標である薬効指標の確立および薬動力学解析を進めていく。
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