本研究では、血小板凝集能を変化させた多血小板血漿をADP刺激した後のプロテオーム解析を行い、血小板凝集能を定量的に反映するタンパク質を探索した。保存検体でも安定に存在する指標タンパクを見出すことにより、臨床現場において血小板凝集能を容易に評価できるようになり、また、抗血小板薬の薬動力学解析が可能となる。 血小板凝集カスケードの最下流では、CalpainによってTalinが切断され、生成したTalin-HeadがIntegrinαⅡbβ3に結合し、IntegrinαⅡbβ3の活性化される。したがって、Talin-Headの生成量を分析することで、血小板凝集能を評価することが可能である。健常人から得た新鮮血液を用いて、PRPを調製し、ADP添加により血小板を活性化した後、還元アルキル化処理を行い、トリプシンで蛋白質を断片化し、その後Talin-Headに特異的なアミノ酸配列を検出できるLC-TOF MS条件を検討し、STVLQQQYNRに相当するMSシグナルを特異的なアミノ酸配列として選択した。合成ペプチドを用いたMSによる測定の条件を検討した結果、必要な濃度範囲で直線性が得られ、測定可能であることが確認できた。また、その測定結果はウエスタンブロッティングによる測定と矛盾せず、ヒト検体を用いた検討が可能であることが示された。 薬物による影響を検討するには動物実験が適当であり、ラットにおけるTalin特異的配列を同定した。ラットにおいてもヒトと同様に光透過度法を用いて血小板凝集能を測定可能であり、ウエスタンブロッティングによるTalinの検出が可能であることを確認した。一方、LC-TOF-MSにおいてはヒト試料と同様の測定条件では該当するシグナルを得ることができなかった。原因究明のため、免疫沈降法およびELISAによる検出を行う方向で実験条件を検討している。
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